#75 kei ページ29
慧「俺んちでいい？」
「…いいよ」
.
黙ったままで歩いていく、美術棟の廊下。2人の間に流れている空気の重さを、嫌でも感じる。
.
『今日は…ありがとう、A』
『うん、私も…ありがとう』
.
あの時、2人きりのアトリエで、
溢れてくる気持ちにもう蓋ができないことを悟った。
それは単にAが好きになったから、だけでは片付けられない想い。
たぶんもう、俺じゃ茉莉花の気持ちを満たしてあげられない。
自分の中で貫き通したい音楽への想いが生まれてしまったから…
それは、今日のAの姿を見て、より強くなった。
Aに言った、「いつか俺もあんな風に弾けるようになりたい」は、
冗談ぽく言ったけど割と本気だったんだ。
.
黙ったまま廊下を歩いていく途中でふと思い出した。
そういえばこの後、打ち上げ行こうって言ってたんだっけ…
さすがに今日は、行けないかな。
.
慧「ごめん、ちょっと忘れ物したかも」
「忘れ物？」
慧「うん、アトリエ…あ、さっきの部屋にね、ちょっと。すぐ戻るからここで待ってて？」
「じゃぁ中庭のベンチにでも座っとく」
慧「ごめん、すぐ戻るから」
打ち上げに行けないのはさすがに2人には悪くて、
直接伝えようと思ってアトリエまで走って戻った。
そろそろ光も戻ってるだろう、と思った。
.
慧「…！」
だけどドアに手をかけようとした時に、見えてしまった。
ドアについた小さなガラス窓越しに、
こちらに背を向けている光
その向かいにA
光の両手はAの肩の上に乗っていて、
それから少しずつ顔が近付いていく。
慧「っ、」
咄嗟に二人に背を向けた。
.
そっか、あの2人、うまくいったのか。
…良かったな…。
.
2人には悪いけど、後でメールで断っておこう、打ち上げ。
いや、悪くないかも。2人きりの時間になって嬉しいかもな。
慧「ふはっ、腹立つわー…、」
キリキリと胸の奥が締め付けられるような痛みを
無理やり飲み込んで歩き出した。
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです！、これからも応援してます、頑張ってください！！ (2019年12月31日 2時) (
レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます！最近更新の頻度が高くて嬉しいです！すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます！ (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました！すぐ駆けつけられなくてごめん（ ; ; ）ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー！楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2019年10月26日 23時
