#74 marika ページ27
最近、慧のことが分からなくなった。
いつも一緒にいた頃は、何を考えているのか、手に取るように分かったのに。
最初の頃は毎日のように取っていた連絡も、お互いの日々を過ごすうちに少しずつ減っていってて、
すれ違いってこういうことなのかなって、少し焦っていた。
.
『なんか慧、変わったね…』
『4年だけだから待っててって、言ってくれたのにっ…』
『ごめん、切るね』
.
あの電話以来、慧とは連絡を取っていなかった。
なんか、今までのケンカとは訳が違う気がして。
.
平成祭のことは、公式ホームページの動画を見て知った。
画面越しに知らない人達に囲まれて、楽しそうに笑う彼の姿を見て、
隣にいる小柄な女の子のことが気になった。
…まぁ、女の勘かな。
.
それでも、
彼が大学でどんな日々を送ってるのか、
ほんの少しでも覗き見れたら、
「今の慧」を少しでも理解できたら、私たちにはまだ可能性あるのかな、って
今思えば、どんな小さなきっかけでもいいからすがりたくて、彼の心を繋ぎ止めておきたくて、必死だったな。
.
広場に集まる人だかりが気になってなんとなく輪の中に入ったら、
真ん中で演奏している慧の姿が目に入ってきて、
それから、どこからともなく舞うように現れた白いワンピースの女の子
動画に映っていたあの子だ、ってすぐ分かって、胸がざわつく。
なのに、目が離せなかった。
.
その後はただ、目の前で繰り広げられる光景に圧倒されてしまった。
慧のピアノは、高校生の頃とは全然質が違っていて、まるで違う人の演奏みたい。
ピアノのこと詳しくないけど、それでもそう思った。
何よりあの子が…
小柄で可愛らしい見た目から想像のつかない力強い姿、飛び散った絵の具で少しずつ染まっていく白いワンピース
たぶん広場にいた人全員が彼女に目を奪われていたと思う。
.
.
力尽きる用に倒れてしまった彼女を、慧じゃない方の細身の男の子が抱きかかえるようにして運んでいって、
心配そうにそれについていく慧
こっそり後をつけた。
.
声をかけようか、黙って帰ろうか。
迷いに迷って、結局来てしまった部屋の前
思い切ってドアを開けた。
振り返って驚いた表情を見せる慧と、その奥にいたあの子
その瞬間、なぜか直感的に分かったんだ。
あ、慧この子のことが好きなんだな、って。
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです！、これからも応援してます、頑張ってください！！ (2019年12月31日 2時) (
レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます！最近更新の頻度が高くて嬉しいです！すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます！ (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました！すぐ駆けつけられなくてごめん（ ; ; ）ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー！楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃみ
| 作成日時：2019年10月26日 23時
