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#69 ページ22

慧「ほんっとに、俺が思いながら弾いたことがそのまま絵になってる!っていうかさ、」


A「…音を聴いた瞬間にね、桜の花びらが見えたんだ」


ふと、着ていた白いワンピースに視線を移す。
古着屋で買ったそれは、あの絵と同じように、あちこちで桜の花びらが舞っているかのように染まっている。


A「だから全然迷わなかった。慧がそんな風に弾いてくれたから、本当に私は描くだけだったよ」

慧「…あるんだなぁ、そういうことって…」

A「…ね、」



そう言ってまた2人でしばらく、大きなキャンバスを眺める。


ミッドナイトブルーの下地に、桜吹雪が雨のように降り注いでいる。時に力強く、時に繊細に。




ふと、慧が何か思い出したように小さく笑った。


慧「まーじびっくりしたよ。Aぶっ倒れるんだもん」


A「ごめんね…!最後の方、あんまり覚えてないや…」


慧「今日は全身全霊で弾いたつもりだったけど、A見て、俺もまだまだだなって思ったわ」


A「いや、もう、いっぱいいっぱいだっただけだよ…」


慧は笑って首を振った。


慧「俺もいつかそんな風に弾けるようになりたい」

A「倒れちゃうくらい?」


慧「そうそう」


くすくす、と慧の肩が揺れる。つられて一緒に笑った。


ふと慧の手が伸びてきて、私の頭をぽんぽん、と撫でた。





慧「今日は…ありがとう、A」


A「うん、私も…ありがとう」



慧の手がなかなか離れていかない。
手から伝わる温度はあたたかい。

あれ、と思ったらその手はそのまま私の頰に滑るように移動して。



慧「……、」




A「……、」




近い距離のまま見つめられて、そらすこともできずに見つめ返した。




さっきまでの柔らかな笑みは消えて、ほんの一瞬切なく揺れたように見えた慧の瞳




勝手に速まっていく鼓動。こんなに近かったら慧に聞こえてしまう…、




思わずこくりと喉をならして、込み上げてくる思いを飲み込んだ時、






ガラリ、とアトリエのドアが開く音

は、と気付いた慧が私の頰から手を離した。



.




「慧、」



.



聞きなれない女の人の声が慧の名前を呼んだ。



慧は、その声に肩をぴくりと動かして振り返った。



.




慧「茉莉花、」




.





彼女に見覚えがあった。

あの夜、慧の部屋で見た制服姿の写真を思い出した。

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設定タグ:Hey!Say!JUMP , 伊野尾慧 , 八乙女光   
作品ジャンル:恋愛
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです!、これからも応援してます、頑張ってください!! (2019年12月31日 2時) (レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます!最近更新の頻度が高くて嬉しいです!すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます! (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました!すぐ駆けつけられなくてごめん( ; ; )ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー!楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年10月26日 23時

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