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握られた手の力はきゅっと締め付けるように強く、引っ張られるように歩いて行く。
大学の構内を出て、そのまま公園内へ。
何が起きたのか分からず頭の中が「?」でいっぱいで、
せめて彼の意図を汲み取りたいと顔を覗き込んだけど、背けるように足を早められてしまうので、
拗ねたように尖った唇がわずかに見えただけだった。
.
A「…ねぇ、」
ざわざわと賑やかな人混みの中、
私の手を握りしめたまま振り返りもせず、ずんずんと進んでいく背中に、堪らず声を掛けた。
A「ねぇってば、聞いてる?」
突然の出来事に思考がついていかず、思わず強くなってしまう口調とは裏腹に、
胸の奥に広がっていくのは、忘れかけていた甘酸っぱい想い…
.
ふわりと吹いた夜風。目の前をひらひらと桜の花びらが舞っていった。
A「わ、」
急に足を止めた彼が、その手を握ったまま振り返った。
慧「……、」
こんなにちゃんと、彼の目を見るの、いつぶりだろうか…?
少し垂れた、二重幅の広い瞳。
いつもは柔らかいはずのその視線が、何かを訴えかけるように揺れて、
A「…!」
次の瞬間、起こった出来事に、
私の呼吸はひく、と止まった…
.
いつの間にか辿り着いていた、そのだだっ広い国立公園の外れ。
花見客も訪れないようなその場所に、忘れられたように小さな桜の木が一本だけ立っていた。
.
気が付いたらぽすん、と抱き締められていた彼の腕の中で、やっと息を吸う。
お日様のような、柔軟剤のような、柔らかい慧の匂いがした…
慧「…黙って行っちゃうから。」
小さく聴こえて来た声は、やっぱりどこか拗ねたように掠れていて、
その一言ではっとした。さっきちらりと見えた彼の表情の意味を、やっと理解する。
慧「…寂しかった」
A「…!ごめん…、バタバタしてて、
…慧も忙しいかな?って思って…!」
慧「俺ってAにとってはその程度のやつだったんだなぁって、」
A「そんなことないよ…!」
ぎゅう、
抱き締められる力が強くなって、耳元で小さくため息が聞こえた。
慧「ごめ…違う。それを言いたかったんじゃない…、」
A「慧…?」
いったいどうしちゃったのか、
彼の言動に戸惑いを隠せない一方で
こんな時なのに拗ねている慧のことを「かわいい」と思ってしまう私もいて…
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とまと(プロフ) - 深夜に一気読みで号泣でした、、こんなステキな作品に出会えたこと、とても嬉しいです!、これからも応援してます、頑張ってください!! (2019年12月31日 2時) (レス) id: e7e27b9562 (このIDを非表示/違反報告)
Nana - いつもドキドキしながら読んでます!最近更新の頻度が高くて嬉しいです!すれ違いってせつないですね、、彼女さんもいい子みたいだし登場人物が皆いい人なので皆に幸せになってもらいたいです続きも楽しみに待ってます! (2019年11月17日 0時) (レス) id: 2ec27d7b3e (このIDを非表示/違反報告)
sayo(プロフ) - 切なくて切なくて、先が気になって仕方ありません。毎回、おもしろ度を最高につけたいのに既に投稿済みで無効になってしまうやるせなさ…ついにコメントまでしてしまいました。更新、楽しみにしています。 (2019年11月12日 19時) (レス) id: 8f2791b52a (このIDを非表示/違反報告)
まひろ(プロフ) - 100票目をいただきました!すぐ駆けつけられなくてごめん( ; ; )ちゃみちゃんの書く伊野尾くんは柔らかくて可愛くて大好きー!楽しみにしてます(*^▽^*) (2019年10月31日 20時) (レス) id: 135a6c956f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年10月26日 23時