君が笑えるように from スローモーション2・・Kei・・

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始まってしまったら、時は少しも待ってくれない。







声なんてほんの少しも出すことができずに、息をするのがやっとのような感じで、

目の前で繰り広げられる世界にただ、圧倒されていた。


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吸い込まれるように妖艶な微笑みを客席に向ける慧くんが、まるで見たことのない別の人のように見えて、胸がぎゅっと苦しくなって、

それでも、時折メンバーが近くに来た時に垣間見せるくしゃっとした笑顔は、よく知っている種類のそれで、

あぁ、やっぱり慧くんだ、とほっとして。




目まぐるしく暴れまわる自分の感情に翻弄されながら、私は必死でその場に立ち続けた。




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やがて彼らは花道を駆け抜けて、会場の中央に位置するステージの上へ。
アップテンポなダンスナンバーが流れ、またドッと歓声が大きくなる。


彼らの踊る背中を見つめる形になりながら、ふと客席に視線を移す。

すぐ近くにいた女の子が視界に入ってきた。
歳は私たちよりはだいぶ下のように見えた。

青いリボンが綺麗に編み込まれた黒髪
その子が握りしめた団扇を見て、ドキリとした。

慧くんのファンの子だ。




釘付けになっていたら、その子の団扇を持つ手がほんの少し震えて、
目元を、メイクが崩れないように優しく拭いながら、その子が隣にいた友達に呟いたのだ。






「やっぱり大好き…幸せ」






涙の混じった笑顔は、スポットライトの光に負けないくらいキラキラしていた。







その瞬間に、分かった気がした。

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