桜雨、恋の音。・・Kei・・

#5 ページ6

光「ねーA、もう前期の授業って立てた？」


A「んー？まだ。今夜やろうかなって」


光「マジ？ね、一緒にやんね？俺あれの見方よくわっかんねぇのよ、なんだっけあの、冊子のさ、」


A「シラバス？」


光「あー、それ！」


A「油絵科と音楽科じゃ科目だいぶ違うと思うけど…」




会話をしながら立ち上がり、帰り支度を始めた。




光「そーゆー問題じゃねーのよ、単位いくつ取って〜とか、システム？がよくわっかんねぇの、」


A「まぁ1年の必修科目なら被るとこあるか」


光「メシ作ってやるからさぁ」


A「メシ！？」





思わず振り返って、ニヤリと笑った。
やった、光のメシ！




A「引き受けた！」


光「おぅ、そんなに好きかよ俺のメシ」





.





夕暮れのアトリエに、くすくすと響く2人分の笑い声。

使いかけの素材と、作りかけの作品を棚に戻して立ち上がった時、
とっくに飲み終わった空っぽのパックが目に入った。

パステルカラーのピンク色に、いちごのイラスト入りの…





A「っ、」




急にさっきの出来事が思い出され、恥ずかしさがフラッシュバックする。




A「えい、」



さっきの出来事を振り切るようにゴミ箱に放ったら、それは綺麗な放物線を描いてすとん、と真ん中に収まった。




光「はは、ナイッシュー！行こ」


A「んー、」







愛用のベースを肩から下げて歩く、細身の背中と並んで、アトリエを出た。

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