#16 ページ18
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A「じゃぁ、私こっちだから」
慧「うん。お疲れ」
ぷらぷらと夜桜の下をゆっくりおしゃべりしながら歩き、
男子寮と女子寮の間に置かれたベンチの前で、立ち止まった。
ふと彼が女子寮を見上げて呟く。
慧「いーなー女子寮ってさ、新しいんでしょ?」
A「あ、うん。去年できた…とか言ってたような」
慧「男子寮まーじ汚いよ」
その時、すぅーっとした夜風が頬をくすぐって、
思わずくしゅん、とくしゃみが出てしまった。
慧「ごめん、寒かった?」
A「大丈夫…」
慧「早く入りな。俺行くわ」
彼はひらひらと手を振って、くるん、といま来たばかりの道を戻って行く。
あれ…?
A「おうち…寮じゃ、ないの?」
慧「んぇ?」
数歩進んだ先から振り返った彼と、目が合う。
慧「そーだよ。俺んち、◯◯駅の近く」
…!!!
A「そーなんだ…!」
いろんな情報が目まぐるしく入ってきて、胸はとくとくと高鳴ったまんまで、
慧「やべ、終電、」
だけど時計を確認した彼が、今度こそバイバイと手を振って駆けていく背中に、これだけは伝えなくては、と思ったのだ。
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A「あの…っ、…慧…!」
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駅に行くには、もう一度大きい公園の中を通り抜けないと行けないのに、
明らかに遠回りしてくれた。
2人で並んでふわふわ歩いていたから気にならなかったけど、
週末の花見客でいっぱいの公園の中。
酔っ払いに絡まれたばかりで、1人で歩くのはきっと心細かったはず。
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慧「ん?」
もう一度足を止め、振り返ってくれた彼に、
さっきより少し距離が離れてしまったから、
ちゃんと届くように。
A「いろいろ……ありがとう…!!」
言い終えた瞬間、あーあ、なんでもうちょっと気の利いたこと言えないんだろ、って自分に落胆したけど、
きょとん、と私を見ていた彼の頰が、瞬間、ふわりと緩んだ。
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慧「おやすみ」
A「うん…おやすみ」
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さぁ、と吹いてきた夜風が再び、夜桜をさわさわと揺らした。
遠ざかる背中が見えなくなるまで、ずっとずっと見ていた。
彼の独特な声の響きが、いつまでも耳の奥に心地良く残っていた。
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夜神月風火 - いつも楽しみに読んでます。ちゃみさんがだいすきなので、更新されるたびにうれしく思います!無理なさらず頑張ってください! (2019年8月15日 15時) (レス) id: d7aa5f874c (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - Twitterで2つ連載されると聞いてわくわくしながら待ってました!いつもちゃみさんの新作を見るとどんな伊野尾くんでも本当にきゅんきゅんするんです!2つ同時に連載されるのは大変かと思いますが、無理なさらないでくださいね!ずっと待ってます! (2019年4月5日 1時) (レス) id: 06987761d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2019年3月22日 0時