桜雨、恋の音。・・Kei・・

#9 ページ11

「何飲む？ビールと、カクテル系と、あ、フツーに炭酸とかお茶もあるけど」


A「お茶で良いです…！」


「はーい」




手招きされたブルーシートの端っこに座る。目の前には宅配ピザやオードブルが雑多に並んでいる。




「はい、コレ。食べ飲み放題だから、いっぱい飲んでね！」



A「あ…りがとうございます」





そのまま隣にいてくれるのかと思ったけど、


その眼鏡の先輩は私に、飲み物と割り箸と紙皿を渡したら、忙しそうに去ってしまった。




.





既に盛り上がっている輪の中に入れるはずもなく、紙コップに入ったウーロン茶をちびちび飲む。


ふと見上げればはっとするほど美しい満開の夜桜。これ以上ないくらいベストなお花見のシチュエーション。

お腹だってペコペコだったはずなのに、なんだか緊張してしまってそんなことも吹き飛んでしまった。




.







「ねぇねぇ、」


A「…？はい…！」





そのままぼーっと、会話にも入らず、紙コップをちびちび傾けて、
飲み終わったらこっそり抜けよう、と考えていた時、

つんつん、と肩をつつかれ、振り返る。




「1年生？かわいいねーっ！」


「何！全然飲んでなくない！？」


A「えと…」




うわぁ、どうしよう。

いつのまにか、見ず知らずの先輩が2人、両側に座り込んでこちらを覗き込んでいた。
絵の具がついた作業着に無精ヒゲ。
この感じは油絵科かな…





「何飲んでんの？お茶じゃん！」


A「あっ、」





右隣にいた先輩に飲みかけの紙コップを奪われてしまった。2人ともすごくお酒くさい…！





「ほら、歓迎会なんだからさー、遠慮しないで！」




紙コップの代わりに、渡されたのは飲みかけの缶ビール。
急な展開に頭が追いつかない。




こういう時って飲まないとダメなのかな…？
でも、お酒なんて飲んだことない…！





「現役生？」


A「はい…」


「やっぱりー！まだ制服全然いけそうだもんね！かわいーい！」



A「ひぇっ」






突然、反対側にいた先輩にガシ、と肩を組まれてしまって完全に固まった。

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