night 207 ページ8
涼「…っ、」
だけど気が付いたら、彼の腕の中にいた。
伝わってくる彼の温もりと鼓動は、油断したら決意した気持ちを簡単に揺らしてしまいそうだった。
涼「…わかった。」
こくりとひとつ、喉を鳴らしたあとに聞こえた、小さく掠れた声は、
今まで聞いたことがないくらい優しかった。
涼「…わかったよ。」
首元から香る、いつもの甘い香り。
あったかい手のひらが、私の頭をぽん、ぽん、と撫でたその瞬間、
A「…ごめん、ね…」
緊張の糸がぷつん、と途切れた。
いつだってこの香りが大好きで、いつだってこの手に触れていてほしかった。
涼「…謝ることじゃないよ、Aが決めたことだろ?」
いつだってこの声を聞いていたかった。あなたは私の憧れだったんだ。
A「うん…」
言葉の端っこに少し混じった涙声。
背中に回った腕はほんの少し震えていた。
涼「だったら俺、…応援するよ」
それでも彼は、笑って、そう言った。
A「涼介…」
.
ねぇ涼介、
どこかのタイミングがひとつでもずれていたら、私達は永遠に一緒にいられたのかもしれないね。
きっとこの先誰と恋をしても、あなたのことは忘れないと思う。
.
あと少しこのままでいたら、決意が揺らぎそうで、
彼の両肩を、そっと押して離れた。
A「今まで、…ありがとう」
いつかみたいに泣き顔のさよならは嫌だったから、
精一杯の笑顔でそう言った。
涼「あのさ、A、」
優しい目をしたまま、彼の指が私の頬に流れた涙を拭った。
涼「最後に一つだけ、…わがまま、言っていい…?」
A「……?」
その時、伸びた前髪の隙間から覗いた、彼の綺麗な形の瞳には、
薄く涙の幕が張っているように、見えた。
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あーみん(プロフ) - ちゃみ様(´˘`*)昨日全話一気に読ませて頂きました!最初から最後までずーっと泣きっぱなしで、やまいのどちらも好きな私には最高の作品でした!他の作品もこれから読ませて頂きます。もぉちゃみ様のファンになってしまいました!今後も素敵な作品楽しみにしてます。 (2020年2月25日 15時) (レス) id: fc6bdef142 (このIDを非表示/違反報告)
mio(プロフ) - 全話一気に読みました!!もどかしく進んでいくストーリーにどうなる?どうなる?とコロコロ転がされている気分でした笑だけど、最後にキュンとして、感動して泣きました。ハッピーエンドで終わってとてもスッキリしました!素敵な作品をありがとうございます! (2019年11月21日 19時) (レス) id: c575e5be48 (このIDを非表示/違反報告)
もこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!前作同様、最初から最後までずっとドキドキしながらハンカチ片手に泣きながら読んでした!最後の“しあわせのかたち”での慧のしあわせって言ってたとこでは涙腺が崩壊してもう号泣していました!これからも応援してます!! (2018年3月4日 14時) (レス) id: 3c654b5b82 (このIDを非表示/違反報告)
菜乃花(プロフ) - 完結おめでとうございます! 前作から引き続き読ませていただいてたのですが、ちゃみさんの作る世界観が好きで、いつも途中で苦しい展開ながらも、最後はちゃんとハッピーエンドにしてくれて嬉しいです!(笑) これからも応援してます!頑張ってください! (2018年2月27日 12時) (レス) id: d8c87a6bcd (このIDを非表示/違反報告)
きのこ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!いやもうほんまに最高です!!!こんな幸せな振り回され方ってあるんだなって思いました(笑)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2018年2月25日 7時) (レス) id: feeba7beaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2018年1月30日 14時