ナイトクルージングLAST・・Kei ＊ Ryosuke・・

しあわせのかたち。 ページ29

A「ただいまー…」




薄暗い部屋に向かって呟く。慧、今日遅いんだっけ。





A「はぁ、」





なんだかどっと疲れていて、体が重い。
ダイニングテーブルの上に、ポストから掴んできた広告やダイレクトメールの束を無造作に放る。






A「ん…？」






広告の隙間から覗いたポストカードに気が付いて、手に取った。







A「…あ！」









『Got married！』









大きく、英語で表記された『結婚しました！』の意味の言葉の下に、
寄り添って笑う美男美女。










A「涼介…！」









『びっくりした？来月、ちょっとだけ日本に帰るよ』









写真の下に小さく、手書きのメッセージが添えられていた。







そっか、結婚したんだ。
写真の中の涼介と知らない綺麗な女の人は、寄り添って幸せそうに微笑んでいて、
ほんの少し胸の奥がちくりと痛んだ。







人間ってわがままだな。自分から手放しておいて、こんな気持ちになって。

だけどどこか、良かったなってほっとしている自分もいて。









…来月、帰ってくるんだ。









一瞬だけ、ぐらりと揺れた気持ちを振り切って、苦笑いしながらポストカードを引き出しの奥にしまった。









だめだめ。わたしには『今』があるんだから。









.









先週から始まった発熱は、緩く上がったり下がったりを繰り返し、気が付いたら1週間が過ぎていて、


そのうちなんだか、食欲まで落ちてしまった。




これくらいなら食べられるかも、と買ったばかりのサラダも、
家に着いたら食べられそうになくて、
袋に入れたまま冷蔵庫にしまった。







ふと、壁にかかったカレンダーが目に入る。
今月末の日付に赤い丸。
すぐ下に慧の字で「おきなわ！」と書いてある。





慧のオフがやっと取れて、行けることになった新婚旅行。海外に行くには時間が少し足りなくて、国内になってしまったけれど、
彼が張り切って、ホテルや航空券を手配してくれていた。









A「ふぁ…」






あくびを一つして目を擦る。なんだか堪らなく眠いや。




時計を見たら、寝るにはまだ早すぎるなぁと思ったけれど、
とても起きていられそうになくて、
ベッドに潜り込んですぐ、目を閉じた。

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