ナイトクルージングLAST・・Kei ＊ Ryosuke・・

daylight 14 (R) ページ22

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涼「やっべ、あと5分、」




時計を見て焦る。
次のスタジオまで、地図を見たらそんなに離れていないように見えて、

タクシー代ケチって歩き出したはずが、思ったより時間がかかってしまって、




…この街にはだいぶ、慣れたはずなんだけどな。





荷物でいっぱいのバックパックを背負い直して、スピードを速める。
こっちに来てからも相変わらずの忙しさで、国際免許証の手続きに行くような暇もなく、
当分この徒歩生活は続きそうだった。





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だけど歩くのって意外と悪くない。






頬に感じる風で、季節の変化をすぐに感じ取れるし、それに、







涼「お、」







川辺に沈む夕日に目を奪われて、こうやって立ち止まることもできる。









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『わぁ、この写真きれい。夕焼け？』


『ううん、これは朝焼け』






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ついでに、いつかの君の声を思い出すことも。






涼「今度こそ夕焼けだよ、」






その瞬間、あ、今だなって思ったんだ。




何となくいつも持ち歩いてしまっていたそれを、コートのポケットに手を突っ込んで取り出した。






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『最後に一つだけ…わがまま、言っていい？』








『あの時のピアス、…向こうに持っていきたい』









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…それは、あの夜に、彼女に聞いてもらった最後の『わがまま』。



そっと夕日にかざすと、それは、オレンジ色の光を受けて、ゆらゆらと揺れた。






…いつか、このピアスを作った時の俺は、君との時間は永遠に続くと信じてた。



君との時間はただ、楽しかった。
先のことなんて少しも分からなかったけれど、あの頃は、側に君がいてくれればそれで良かった。


だけど、人はずっと同じところにはいられないから、
生きている限り、前に進まないといけないから。





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水面に沈む夕日に向かって、ピアスを放った。


キラキラと放物線を描いて、それはオレンジの水面の中に消えた。









涼「…ありがと、」









不思議と、悲しい気持ちはなかった。
思い出すのは、幸せなことばかりだから。









〜♪









ポケットのスマホが音を立てて震える。






涼「やっべ、」






慌てて画面をタップして、走り出す。








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ねぇA、それでも俺は前に進むよ。



この街で叶えたい夢があるんだ。






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胸の奥に芽生えた、ほんの少しの切なさを飲み込んで、




君のいない日々への一歩を、踏み出した。

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