ナイトクルージングLAST・・Kei ＊ Ryosuke・・

daylight 10 ページ18

慧「うるっさいなぁ、高木ぃ、鍵忘れた…、」






ほどなくしてドアの向こうから聞こえてきたのは、懐かしいのんびりしたトーンの声で、






慧「の…え…？」







ドアを開けた瞬間彼は、とろんと眠たそうにしていた垂れ目をまん丸に開いて、私を見つめた。







慧「A…？」



A「慧、ひさし、ぶり、」







あぁ、良かった。変わってない。いつもの、元気な時の慧だ。

途端にきゅん、と胸が締め付けられて、上手く話せなくなった。







慧「え…？何で？」





A「作りに来た。…トマト鍋」





ぎこちない喋り方のまま、手に持っていたスーパーの袋を見せる。






A「あの、えと…これを、そこで、高木さんにもらって」



慧「そーじゃなくて、何で日本にいんの？」



しどろもどろになっていたら、逆に詰め寄られて思わず一歩下がった。



A「…え？」



慧「あいつとなんかあったの？ケンカでもした？」





あぁ、やっぱり慧、全然変わっていない。






A「違う、」





だってこんな時なのに、私の心配ばっかりしてる。





A「違うよ…！」





さっき後ろに下がった足を一歩、踏み出した。







A「私、行ってない…！」






慧「へっ？」






A「行ってないよ、ニューヨーク…断ったの」





慧「ほぇ？何で？」







私のその答えを、彼は全く予想していなかったようだった。







A「お店、やめたくなかったし、それに、」







もどかしくて、一刻も早く伝えたくて、迷いはなかった。






A「私、慧のことが…」









顔を上げて、彼の目をまっすぐに見つめた。









A「慧のことが、好きだから。」









…言っちゃった。




勢いでそこまで言ってしまってから、心臓が飛び出しそうなくらいに跳ね始めた。

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