ナイトクルージングLAST・・Kei ＊ Ryosuke・・

daylight 8 (Y) ページ16

A「高木さん…！」




振り返った彼女は、元々大きい目をこれでもかっていうくらいに見開いて、俺を見つめた。




A「お久しぶりです…！」



雄「お、おう」




話しかけたはいいものの、見切り発車で二言目に困っていたら、




雄「あれだな、今日は良い天気…」



A「あの！」






俺の話は勢いよく遮られた。






A「慧……元気に、してますか…？」





真剣な瞳には既に、うっすらと赤い。





雄「あぁ、」



雄「元気だよ。今はドラマの役作り頑張ってる」





A「体は…あの…、





体調の方は、どうですか…？」






言葉を選びながら、切実に俺を見つめる瞳に、あぁ、この子は何もかも知ってるんだな、と察した。







雄「真面目に病院通い出したよ、あいつ」


雄「薬の量もだいぶ減ってる。完治まで、あともう少しだと思う」






A「そう、ですか」





みるみるうちに、彼女の瞳から涙が溢れた。






A「良かった…！」






道行く人からの視線なんて構うことなく、そのまま彼女は泣き続けた。



後から後から、涙は流れて、


あいつへの想いの大きさを、物語っているように見えたんだ。








A「じゃ、私はこれで…」






バッグからハンカチを取り出した彼女は、ぺこりと頭を下げて、青信号になった横断歩道を歩き出した。






雄「え？」





終わり？いいのかよそれで！





雄「待てよ！」







良くねぇだろ！









雄「あんた知ってるんだろ？トマト鍋の作り方」









A「へ？トマト鍋？」









おせっかい？
プライバシーの侵害？









雄「…今から言うことは俺の独り言だ」




雄「1回しか言わねぇぞ」









やってること無茶苦茶だなぁって、自分でも思ったよ。









.









雄「…あいつは今もそこで、あんたのことを、…待ってる」











だけどさ、
思い合ってるはずなのに、お互いの立場を考え過ぎて二の足を踏む、なんてのは、この世界ではよくある話。









雄「俺の代わりに作ってやって、トマト鍋」









雄「あいつには、あんたが必要だよ。」









彼女は驚いた顔のまんま、









俺が差し出したスーパーの袋と鍵を、受け取った。

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