ナイトクルージング3・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 120 ページ41

その瞬間、何もかもが分かってしまったような気がした。







あぁそうなんだ。
慧はずっと、あの人のことが好きなんだ。







きっと、あの日彼の部屋で見てしまった、あの写真を撮った頃からずっと。








.







しばらくその横顔を少し離れたところから見つめていたけれど、時計を見て我に帰る。


一歩ずつそっと彼に近づいて、
衣装のジャケットの裾を軽く掴む。






A「…慧、」



慧「ん…？A、もう時間？」




A「スタンバイ15分早まったって…今みんな、慧のこと探してるよ」


慧「やべ、ごめん」






私に気付いた彼はやっぱりいつもの笑顔で、何事もなかったようで、
すたすたと、ドアに向かって歩き出した。







.







慧「あ、Aさ、今夜うち来れる？」





廊下に出たと思ったら、くるりと振り返った彼が私の目を覗き込む。




A「今夜？ん…行けるよ」


慧「良かった。じゃぁ待ってる。いいものあげるね」


A「何？」


慧「まだひみつー。」






ポケットに手を突っ込んだまま、笑いながら慧はスタジオに向かう足を早めた。





.







そうやっていつも、苦しいことも悲しいことも、
一人で全部、飲み込んできたの？






さっきの彼の、見たこともないような切ない表情が、








頭から離れなかった。

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