night 112 ページ33
これってきっと、あの人のだ。
慧が大切そうに抱き締めていたあの、綺麗な人。
くるりと巻かれた髪の毛と、すらりと伸びた長い手脚の後ろ姿を思い出す。
そういえば慧は、全然相手にされてない、なんて言ってたけど、
あの人は、けっこうこの部屋に来てるんじゃない?
きっと、私なんかよりずっと。
チャラチャラ遊んでるわけじゃなくて、もっと特別な人なんじゃないかな。
でも、あの人は結婚してるし…。
A「は、」
ぐるぐる考え出したら止まらなくなってしまって、そんな自分に少し驚く。
私の胸がざわざわする必要なんかないのに。
だって私は慧にとっての、何でもない。
…そういえば私は、慧のことを何も知らない。
彼はほとんど自分のことを話さない。
A「よいしょ、」
ぐるぐる考えたってあまりに不毛。
立ち上がって髪の毛を捨てよう、と思ったら、
A「わ、」
思ったより動揺していたのか、本棚の下に入れっぱなしだったモップが引っかかって、本棚がぐらりと揺れた。
瞬間、ばさばさと棚から、いろいろなものが落ちる音。
A「あーぁ…」
きっとこの本たちって、慧が大切にしていたはず。
ひとつひとつ丁寧に、本にごめんねって言いながら棚に戻していたら、
ガタン!
A「いっ…た、」
さっきモップを引っ掛けた衝撃で少し動いた本棚の上に置いてあった白い箱が、バランスを保ちきれずに私の頭の上に落ちて来た。
中身がバラバラと足元にちらばる。
A「え…?」
足元に散らばったそれを見て、思わず体が固まった。
銀色のシートに規則的に並ぶそれは、
A「薬…?」
こんなにたくさん?何の?
混乱した頭のまま、銀色のシートの裏側を見たら、
見慣れないカタカナ表記が一様に並んでいた。
全部同じ種類。
だけど私、慧が薬を飲んでいるところなんて、見たことがない。
A「見なかったことに、しよ」
彼のプライベートに立ち入る気なんてなかった。
慌てて元のように、箱の中に薬を戻す。
A「あれ、」
だけど最後の銀色のシートをしまったところで、
薬に紛れて裏返しになって床に落ちていたそれを、何気なく拾って、思わず心臓がびくん、と跳ねた。
A「これっ、て…?」
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まーちゅ - すごく上手ですね、とっても面白いです!がんばってください! (2017年10月16日 23時) (レス) id: e40a6ac71b (このIDを非表示/違反報告)
由依 - 伊野ちゃんが、かっこよすぎます!スローモーションとは、違う感じの伊野ちゃんが出ていて最高です。これからも応援しています。(伊野尾担です(o^^o)) (2017年10月13日 16時) (レス) id: 0583577ad2 (このIDを非表示/違反報告)
らる(プロフ) - 切なくてきゅんとしました!表現のしかたが好きです!応援してます! (2017年10月11日 22時) (レス) id: 4c06eb038c (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 毎回見てます!大好きです!これからも頑張ってください!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 32c992ad4d (このIDを非表示/違反報告)
いのちぇり(プロフ) - ほんまに大好きすぎて。。。毎日毎日更新楽しみにしてます! (2017年10月2日 19時) (レス) id: 54a3978f9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちゃみ | 作成日時:2017年9月17日 18時