ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 47 ページ9

相「それで、涼介は元気だったの？」


A「はい、相変わらず…いやちょっと、パワーアップしてたかな…」


相「パワーアップって強そうだな」





閉店後の店内、レジの前で売り上げを計算していた相葉さんが笑った。





相「っていうかびっくりしたよ、Aちゃんが出てくるんだもん、しかも転ぶし、」


A「あぁもうそれ、言わないでください…」


相「いやー悪いけどマジ笑った。可愛かったけどね？」



飼い主の笑い声に、相葉さんの愛犬で、うちのお店の看板犬…豆柴の『ニノ』がぴくりと耳を立てて起き上がった。


つぶらな瞳がめちゃくちゃかわいいわんこだけど、飼い主以外には全然心を開いてくれない。





相「でもさ、しばらくやるんでしょ？涼介のアシスタント」


A「…へっ？」




カットの練習を終えて、片付けをしていた手が、その言葉でぴたりと止まった。


相「あ、安心して、店としては全面的に応援したいと思ってるから」

A「は…？」




私の様子を見て、相葉さんの目がきょとん、と止まった。




相「あれ？涼介から聞いてない？やっぱりしばらく圭人が復帰無理そうだから、忙しい現場の時だけA借りたいです、って電話来たんだけど」


A「いや、何も、え…？」


相「あいつも大出世だよな、伊野尾慧の専属なんてさ、」







ガチャン！






混乱した頭のまま話を聞いていた私の頭は、彼の名前を聞いて完全に停止した。
足元に散らばるヘアクリップ。



大きな音に怯えて、ニノがしっぽを丸めて相葉さんの膝の上に避難した。





相「え、ちょっと大丈夫？」







アシスタント？私が？







相「おーいAちゃん？」







伊野尾さんの専属？涼介が？









A「聞いてない…何も…！」









何もかもが都合の悪い方向に向かい始めてる気がして、なんだか手足が小刻みに震え出した。







私の様子を不審がって、『わん！』とニノが大きい声で一回だけ吠えた。

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