ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 82 (R) ページ43

涼「すみません、遅くなって…あれ？」


リリ「あ、山田さん！」




午後8時半、約束の時間より少し遅れて着いた個室のダイニング。

『スタッフさんやカメラマンさんとの食事会』という名目で声をかけられていた俺は、予想外の景色に面食らっていた。


.



リリ「今日はお疲れさまでした！何飲みます？」


そこにいたのは、彼女１人だけだったから。


涼「あれ…？他のスタッフさんは？」


リリ「あぁ、それがぁ、」


大げさに長い睫毛を震わせながら、彼女は言った。


リリ「行けるはずだった皆さん、都合が悪くなっちゃって、」


涼「え、」


リリ「なので今夜は、２人になっちゃいました」


涼「あ、」


途端に浮かぶ、Aの顔。



涼「そ、なんだ」




スタッフさんやカメラマンさんとの繋がりを持つこともこの業界では大切で、
ましてや自分は帰国してきたばかり。
日本で、ある程度の人脈は広げておきたい。
そう思って来たんだけど。



なんだ、
だったら俺だって今夜は、Aと、



リリ「あれ…迷惑でしたか…？」


涼「ん？あぁ、いや、そういうわけじゃ、」




狭いダイニングバーの個室。
彼女の向かいに取りあえず腰掛ける。



ヘアメイクとモデル。彼女はあくまで仕事の相手で。



今後もきっと一緒に仕事する機会があるだろうから、ここはうまくやらないと、かな。


メニューから顔を上げて、とりあえず笑顔を作る。






涼「んじゃ、俺カシスオレンジにしようかな。リリちゃんは？」





俺の様子を見て、彼女の表情は途端にぱっと明るくなる。




リリ「じゃぁリリも、同じのにしようかな。っていうか山田さん、いきなりカシオレってかわいすぎ」


涼「ばれた？俺全然飲めないんだよね、」




今夜は当たり障りなく、飯食ったらさっさと帰ろ。





適当に相槌を打ちながら、メニューの表に視線を移す。

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