ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 79 ページ40

慧「あっつ、」



A「わ、」





2人でレシピのアプリとにらめっこしながら、1時間。
フライパンの蓋を開けたら、美味しそうな匂いが部屋を満たした。




見よう見まねで作ったアクアパッツァ。
慧が「どうしても入れたい！」っていうからプチトマトも放り込んだのだけど、いい具合に火が通ったそれは、フライパンの中で鮮やかに赤色が映えていた。







慧「え、なんかすっげー美味そうじゃない？」

A「美味しそう！」





ぐー、きゅるる。




言い終わると同時に大きな音でお腹が鳴って、思わず自分のお腹を抑えて俯いた。
途端にかぁ、って熱くなる頰。



そんな私をきょとん、と見つめていた慧は、ふんわり笑って言った。







慧「腹、減ったね？」


A「うん…とても。」


慧「早く食お、あ、さっきのビール半分こしよっか、」


A「うん…、」





てっきりからかわれるかな、って思ったのに。
誰かに優しくされるのは久しぶりで、ほんの少し戸惑う。





冷蔵庫を開ける、鼻唄混じりのご機嫌な背中。





A「…あ、その歌…なんだっけ、」



慧「んー、これ？これはアレだよ、…あれ、なんだっけ」


A「えー！気になるよー！」








それは確か、随分前に解散したロックバンドの曲だった。







up & down...
up & down…

slow first

stay toghether...








なんとなくゆるゆると、慧の鼻唄に合わせて歌詞を口ずさむ。







慧「調べたらすぐ出てきそーじゃない？」


A「えぇ、そういうのやだ、自力で思い出したい」


慧「あ、メシ炊けた、」





ピー、と炊飯器のブザーが鳴って、待ってましたとばかりに彼は蓋を開けた。
ふわり、炊きたてのご飯のいい匂い。







慧「とりあえず食お、俺も腹減った」








振り返った彼の瞳はキラキラで、まるで小さい子どもみたいだった。

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