ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 73 ページ35

リリ「わ、」


A「きゃ、」






トイレの前で固まっていたら、いつの間にかメイク直しを終えて出てきた彼女とぶつかってしまって、
持っていたメイクポーチがガチャリと落ちた。






リリ「わぁ、ごめんね、」


お人形ちゃんは優しくそう言って、ポーチをはい、って拾ってくれた。





A「あ、こちらこそ…、」


リリ「あ、アシスタントさんだ、」


「アシスタント？」






彼女の隣、スラリと背の高い女の子が私の顔を覗き込む。
リリちゃんの可愛らしい顔立ちとは対照的。クールで凛とした雰囲気の女の子。





リリ「そうそう、山田さんの！今日はありがとうございました」


A「あ、いえ…、」






キラキラとした2人を目の前にして、なんだか自分がちっぽけに思えて、思わず俯く。






「もう、リリ浮かれ過ぎ」


リリ「へへ、ごめーん」






遠ざかって行く2人の背中をぼーっと見つめる。









「あーぁ、レナの裕翔くんにはいつ会えるの？」


リリ「きっと会えるよ、そのうち」


「あんたが伊野尾慧から繋いでくれるって言ったんでしょ」


リリ「そうだっけぇ、」








少しずつ遠くなっていく2人の声を聞きながら、頭の中ではさっきの彼女達の会話がまだ、ぐるぐると巡っていた。









そっか。



今夜、空いてるんだ、涼介。









.









「あ、…思い出した、あの子」


リリ「んー？」


「あの子、こないだのパーティーの夜、伊野尾慧にお持ち帰りされてたよ」


リリ「え、あのアシスタントちゃん？」




「そー。裕翔くん見つけて追っかけてたら、フラフラしながら一緒にタクシー乗るとこ見た」




リリ「ふーん…」









リリ「そう、なんだ」










.









遠ざかっていく２人の、そんな会話には気付かなかった。

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