ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 69 (K) ページ31

夜って長いんだな、って思うようになったのはいつからだっけ。







鞄の中、いつの間にか手放せなくなったピルケースを取り出す。

睡眠導入剤、なんて、最近じゃ珍しい薬でもなんでもないけれど。









適当に容器を振って出てきた粒は３つ。
規定量を余裕で超えていたけれど、最近効き目が弱くなってきた気がするし、まぁいっか。
彼女の残していった琥珀色のグラスを傾けて流し込む。









アルコールの濃い感覚に脳がくらり、と揺れるみたい。









…明日、仕事何時だっけ？


高木に迎えに来てもらえばいいや。








彼女の香りが残るシーツの上、少しずつ遠くなって行く意識の中でどうにか高木にメッセージを打って、







送信ボタンを押した途端手からスマホが滑り落ちた。








カタン、とそれが床に当たる固い音は思ったより遠く、









.









『えっと、慧、』








深い闇の底に落ちるか落ちないか、








『明日は何時に起きるの？』







なぜかあの子の声を思い出していた。








.








…そういえば、なんでかな。




あの子と過ごす夜だけは、




穏やかで、優しいんだ。

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