ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 66 (K) ページ28

穏やかな寝息を聴きながら、眠ってしまった彼女の長い髪を弄ぶ。


ふと露わになった華奢な肩の辺りに触れたら、




トモカ「ん…、慧、」


眠そうに掠れた声がした。


慧「あれ、起こしちゃった、」


トモカ「んんごめん、寝ちゃったの…慧ちょっと激しすぎ、」



慧「疲れちゃった？」


トモカ「そうじゃなくて…、いっぱい話したいことがあったのに、」


慧「ごめんごめん、」


もう、と口を尖らせた彼女は、バスローブを羽織って立ち上がった。


トモカ「そうだ、お土産があるんだよ、」


得意げにキャリーバッグの中から取り出したのは、革張りの薄い箱だった。


慧「何？」


トモカ「ふふ、見て」


慧「あ、チョコレート？」


トモカ「正解！パリに美味しそうなショコラのお店がたくさんあったの！」


箱を膝に乗せてベッドに腰掛けた彼女は、キラキラした子どもみたいな目で話し始めた。
見たこともない景色や街並みのこと。それから初めて立ったパリのステージのこと。


話に耳を傾けながら、彼女の後ろに座って、腰に手を回す。


慧「一個食べてい？」



トモカ「うん！どれにする？こっちがビターで、こっちがミルク、あとこれは、ラズベリー！」


慧「ビターかな、」

トモカ「はい、」


彼女が口元まで運んでくれた一欠片を口に入れた。
甘くて、でもほんの少し、ほろ苦い。


慧「うま、」


トモカ「よかった！じゃ、私はラズベリーにしよっと」


慧「…トモカさん自分が食いたいやつ買ってきたっしょ」


トモカ「ふふ、」


無邪気にチョコレートを頬張る姿はなんだか子どもみたい。


ふと、愛しくなって、唇を重ねる。



慧「あ、」


トモカ「何？」


慧「ラズベリーもうまいね、」


トモカ「ほんとー？味分かった？」


慧「んー、もう一回確認、」


トモカ「ん、ふふ、」




唇をくっつけたり離したり。君の唇はいつだって、チョコレートより甘いけど。



慧「…俺もいつか行ってみたいな、パリ」


トモカ「きっとすぐ向こうのステージに立てるよ。最近の慧、すっごくオーラがあって、キラキラしてるもの」


慧「そうかな…」


トモカ「そうだよ」


俺が言いたいことってそういうことじゃないんだけど。
彼女の頰に触れて、再び唇を重ねる。



トモカ「ん…、」




いつかさ、2人で、




トモカ「……は…、」




手を繋いで、パリの街を歩きたいなって。




トモカ「ん……、慧」



そんな夢みたいなこと言い出したら、君は笑うかな。

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