ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 61 ページ23

「すごい…！今日はすごいの撮れそうですね！」


カメラのリハーサル後、モニターに映し出された慧を確認したスタッフさんから、そんな声が漏れ聞こえた。






そこには真っ赤なアイラインを引いて、花びらの中に佇む、さっきとは別人みたいな慧がいた。






「伊野尾さん、そんな感じでお願いします！次、目線外したのもらえます？」


慧「あーい」




.




カメラの前に立った慧の存在感はさすがだった。

返事も声ものんびりしたまんまなのに、カメラマンさんの要求に次々応えるその表情はまるで別人で、

彼の表現のレパートリーの多さに思わずため息が出てしまう。





.






涼「やっぱさ、すごい人だわ伊野尾さん」


A「ん？」


いつの間にか私の隣に立った涼介がぽつりと呟いた。



涼「コンセプトとか、ちらっと話しただけで全部伝わった。何を求められているのか理解する力が的確だし、表現の幅がマジ広い」


A「へぇ…」


涼「ただ人気あるだけじゃないよあの人」





自分にも他人にも厳しい涼介がここまで他人をほめるのは、珍しい。





A「そう、なんだ」





なんだか眩しいな。







目の前にいる2人は、私とは同世代だけど、紛れもなくプロだ。それも、超一流の。







それに比べて、私は…？






彼らと同じ場所にいるのに、同じ目線に立てていない気がして、思わず俯いて足元を見た。

night 62→←night 60

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す