ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 55 ページ17

慧「はー、今日も疲れた」





寝室に入るなり、彼はベッドに飛び込んで、さっきの猫みたいな伸びをもう一回した。






慧「何してんの、寝ようよ」


A「あ、うん…」


慧「早く、」






ついこないだの夜のことが思い出されてベッドに入るのを躊躇していたら、伸びてきた手が私を優しく引いて、




されるがままにベッドに入ったら、背後からあったかい腕が私を抱いた。







慧「はぁ、気持ちい、」






いつのまにか長い脚まで絡ませられて、なんだか抱き枕になった気分。






慧「布団に入った瞬間っていちばん幸せじゃない？」





耳元で聞こえる彼の声はとろりと眠そうに掠れ始めて、
この頃には私の警戒心はすっかり解けていた。






A「んん、ご飯食べる瞬間も好きだけど」


慧「あぁ、それも良いな、選べねぇ」






私の首の後ろ辺りに顔を埋めた彼のくぐもった声は、少しずつボリュームが落ちていく。





慧「…明日も仕事？」


A「うん、お店は10時から」


慧「んじゃ少しゆっくりしていきな、」


A「ん…伊野尾さん、は？」


慧「けい」


A「ん？」


慧「伊野尾さんじゃなくて、けいがいい。」






なんだか急に、小さい子みたいに甘えた口調。
不覚にも胸がきゅん、と、動く。






A「えっと、慧、」


慧「なーに…」


A「明日は何時に起きるの？」


慧「2時50分…」


A「え？夜中の？」


慧「3時に高木が迎えに来る…起こしてね、明日オレ、生放送の日、」


A「え！早く言ってよ、アラームかけなきゃ」






起き上がろうとしたら、その手と脚が私の体をきゅ、と抑えてベッドに戻した。






慧「俺の携帯鳴るからへーき…、」


A「あとちょっとしか寝れないね、」





時計はもう12時を回っていたはずだから、2時間と少しくらいしか眠れない。芸能界ってそんなもの？

でも、返事の代わり聞こえてきたのは、規則的な寝息。








A「…寝た？」


私を抱き枕みたいにしっかり抱えたまんま、彼はすやすやと眠りに落ちていた。






そういえばずっと緊張していたからすっかり忘れていたけれど、
私も1日中本当に忙しく働いて、体はくたくただった。







あったかい腕と彼の適度な重さを感じながら、次第に瞼が重くなって、







彼の呼吸リズムに合わせるように、









すとんと眠りの世界に落ちていく。

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