ナイトクルージング2・・Kei ＊ Ryosuke・・

night 52 ページ14

A「お風呂、ありがとうございました…」


慧「ん、おかえりぃ」




ソファに座ってテレビを見ていた彼が、立ち上がって近付いてきた。




何、近い！




警戒モードに入った途端、彼は私をまじまじと見て、私の着ているTシャツの裾を引っ張って笑った。



慧「これちょっと大きかったね？」


A「ん、そうです、か？」


慧「や、やっぱAちゃんちっちゃいよ、サイズ感が新鮮〜」





…それは誰かと比べてってこと？




慧「ごめんね、部屋着、このサイズしかなくて」


A「あ、いえ…全然だいじょーぶ、です」




なんて疑問が一瞬頭を掠めたけれど、




ふにゃふにゃの笑顔で、まるで小動物にするみたいにわしゃわしゃと頭を撫でられて、
警戒モードに入っていた体の力がちょっと抜ける。






慧「あ、水飲む？」


A「水っ…！」





出た！水！





前回の記憶にあっという間に引き戻される。
唇はまだ、その感触を生々しく覚えている。






慧「はい、」





再び警戒モードに突入しそうになっていた私に、彼は冷蔵庫から取り出した冷たいボトルを手渡した。





A「どうも…、」




あれ、普通じゃん。



慧「俺もお風呂入ってくるね？」



A「あ、どうぞ…、」



慧「適当にゆっくりしてて？本棚とか好きに見ていいから」




最後にもう一回、彼の手が頭にぽん、と触れた。
優しい、あったかい感触の。





…何だろ。普通に優しいじゃん。




.





一人取り残されたリビング。
付けっ放しのテレビから、深夜のニュース番組のオープニングが流れる。

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