傘の下の記憶 ページ34
「...もしもし？」
零れる涙を手の甲で拭い電話に出た。
「あ、A？おはよう。具合はどう？」
昨日、ショックのあまり、けいちゃんの前で態度がおかしくなってしまった事を体調のせいにしていた。
「...うん、大丈夫」
「そう？なんか鼻声じゃない？」
...それは、彼を想って泣いていたから。
「大丈夫か？熱は？」
こんな私を、電話の向こうで心配してくれるけいちゃんの少し慌てた声に
今頃になって罪悪感が束になって押し寄せてくる。
ごめんね、けいちゃん、ごめん...。
私、本当にサイテーな女だね。
声が漏れないよう、口元を抑え必死に込み上げてくる涙を隠した。
「...ッ」
「やっぱり熱があるのか？わかった。今日は仕事は休んでいいから、大人しく寝てろよ。後で見舞いに行くから」
それでも漏れてしまった声に、勘違いしたけいちゃんはそう言って電話を切った。
「うっ...ッ...」
途端に声を上げて、テーブルに突っ伏し泣き崩れた。
ごめんね、けいちゃん。
ごめんね...。
何度も何度も心の中で謝って、心の底から申し訳ないと思っているのに
窓の外から微かに聞こえてくる、久々に降りだした雨の音に
呆れるほど昔の記憶が甦る。
.
「ねぇ、どうしていつも傘を持ってないの？」
今と同じ梅雨の時期。
毎回傘を持ってない彼が不思議で
バイトの帰り、隣で嬉しそうに私が傘を広げるのを待ってる彼にそう尋ねた。
「傘は持ってるよ」
「えっ？だったら・・・」
「あげるんだ、途中で人に」
「あげる？」
「うん。Aと一緒に帰れる時は、こうして一緒に歩きたいから(笑)」
そう言ってにっこり笑った彼は、嬉しそうに私の手から傘を奪っていった。
「A、もっとこっちにおいでよ。濡れちゃうよ(笑)」
小さな私の傘の下。
右肩をびしょ濡れにした彼は
決まって幸せそうに笑ってた。
.
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ami(プロフ) - プリンさん» プリンさん、お話を読み返して頂けて嬉しいです。ありがとうございます。複雑なお気持ちの中、私のお話が少しでもプリンさんのお役に立てれば幸いです。コメントありがとうございました。 (2020年6月24日 22時) (
レス) id: ec23a73c19 (このIDを非表示/違反報告)
プリン(プロフ) - このお話何度読んでも好きです。今現在 チャンミンの結婚を祝福できずにいます。小説を再び読ませていただいて落ち着かせてる状況です。 (2020年6月21日 22時) (レス) id: 8f9d21c3ec (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - ちなみさん» ちなみさん、こちらのお話も読んで下さりありがとうございます(*^^*)可愛がって、は悪い男を目指したんですが結局可愛くなってしまいましたね(笑)次々お話を読んで下さり嬉しいです！ (2017年1月8日 23時) (レス) id: 85be8d7d92 (このIDを非表示/違反報告)
ちなみ(プロフ) - こんばんは（⌒_⌒）可愛がってあげるからも年下の彼も読みました。可愛がっては、何？チャミ酷い〜！と思ったけど、やっぱり可愛いチャミで良かった。年下の彼も、最後はハッピーエンドでホッとしました（⌒_⌒）今はI knowを読んでいます。切なそう(T_T) (2017年1月8日 0時) (レス) id: 78ec05bb04 (このIDを非表示/違反報告)
ami(プロフ) - 館花茶妃さん» 館花茶妃さん！コメント嬉しいです！ありがとうございます(*^^*)登場人物に少しでも共感できるところがあるとの事でとても嬉しいです。お話はまだ読んでない物もあるのでしょうか？アイツのお話やIknowもぜひ読んで頂けたら嬉しいなぁ。いつもありがとうございます！ (2016年6月28日 15時) (レス) id: 7734665c8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ami
| 作成日時：2015年5月28日 8時
