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040:平穏な日々ページ41

「ｼﾞｮｾﾌおはよう～」

小さなｼﾞｮｾﾌが

嬉しそうに駆け寄ってくる。

大きな大きな窓から

あふれんばかりに広がる青空と

穏やかな海。

「ちょっとだけお庭お散歩しよっか」

芝生の上

ｼﾞｮｾﾌは笑顔でよちよちよちよち歩く。

まだまだ赤ちゃんだけど

すぐにこの庭を駆け回る日が来るだろう。

ここへ来てやっと1か月が過ぎようとしている。

ﾁｬﾝﾐﾝは相変わらず忙しそうだ。

昨日久しぶりに早く帰って来たから

夜中まで2人で飲んで

気付いたらきちんとﾍﾞｯﾄﾞに寝かされていた。

ﾁｬﾝﾐﾝはもう出かけたのだろう。

私が起きた時にはもういなかった。

ｽﾏﾎを充電していなかった事を思い出して

ｼﾞｮｾﾌを抱いて部屋に戻った。

まるでお城のように大きなこの家

部屋の中にあるものも

とにかく大きくて贅沢でちょっと緊張する。

Aが過ごしやすいように変えて行っていいからね。

ﾁｬﾝﾐﾝは口癖のようにそう言ってくれる。

これ以上の望みなんて

そんなに思いつくわけもないのに。

「あ…誰だろ…」

知らない番号

戸惑いながら電話に出たら

懐かしい声が聞こえた。

『A…？』
「蒼…くん？」
『良かった…やっと繋がった…』
「…」
『ずっと電話してたんだよ』
「え…？」
『今何してる？』
「蒼くん、あの…」
『久々こっちに帰って来てるんだ。嫁と娘はスイスにいるから俺一人で…A会えないかな？』
「…何…言ってるの？」
『あの時…ちゃんと話せないまま別れたから…ずっと後悔してる』
「後悔…？」
『Aは俺のために身を引いたって分ってる…謝りたいんだ』
「ｱﾅﾀの…ために…身を引いた…？」

背後に気配を感じた時には

私のｽﾏﾎはもう彼の大きな手の中だった。

ﾁｬﾝﾐﾝは紙袋いっぱいのフルーツをダイニングのﾃｰﾌﾞﾙに置いて

無言のまま私のｽﾏﾎを耳に当てた。

ﾁｬﾝﾐﾝがいつ怒り出すか分からなくて

心臓がドキドキしている。

だけどﾁｬﾝﾐﾝは一言も発せず

とうとう電話は終わったようだ。

「ただいま」
「…お買い物行ってたのね」
「朝ごはん食べよう」

嬉しそうにﾁｬﾝﾐﾝに纏わりつくｼﾞｮｾﾌを

優しい顔で抱き上げながら

ﾁｬﾝﾐﾝはにっこり笑った。