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026:本当にごめん CM ページ27

「今日は…泊ってもいいですか…」
「どうして」
「…すみません…やっぱり帰ります」
「ソユン」
「…はい」
「僕、キミが好きで付き合ってるわけじゃない」
「…何となく気付いていました」
「キミはいい子だけど…身体を重ねたり、キスしたり、そういうの求めてない」
「え…」
「僕はただ…キミの話が聞きたいんだ」
「時々思うんです。チャンミンさん…福岡に何か思い出があるのかもって」
「…」
「…」
「もう…電話しません」
「…」
「会いにも来ません」
「…」
「そんなに忘れられない想いがあるなら…素直になってください」
「キミはやっぱり…いい子だね」





僕は最低な男だ。

誰の恋人になっても

それは変わらないんだ。





車の鍵だけを持って

あの海辺へ車を走らせる。





夕方のオレンジと夜の藍色が彩る薄紫の空。





この瞬間も

やっぱりAさんが 僕のすべてを支配している。

まるで、この空のように。





想いが通じた日

キスをした日

喧嘩した日

手を 繋いで散歩した日





別れて以来

訪れる事のなかったこの海辺は

あの頃と同じ色で

最低な僕を出迎えて

そして 包み込んだ。





どうしてもっと早く来なかったんだろう。





ゆっくりと砂浜を歩くと

風がサラサラと前髪を揺らした。





「…チャンミン」





眩しくて 目を覆っていた右手

指の隙間に見えた 小さな背中と




僕の、名前。




「チャンミン…」




胸が締め付けられるのは

温度

感触

言葉

本当は全部 覚えているからだ。





「何…?」
「え…」





涙の流れ方とか

驚いた時の顔とか





「僕はここにいる」
「…」
「ここに…いるよ」





全部を抱き締めたまま

手放せなかったんだ。





ごめんね、Aさん。

こんな僕で

こんな僕でいる事しかできなくて

本当にごめん。

027:また→←025:忘れることなどできなかった。



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作成日時:2017年3月5日 12時

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