Re: (ページ21)

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020:鍵　CM ページ21

「Aさんﾒﾓ見てくれたかなー」
「…どうでしょうね」
「携帯の番号交換しとくべきだった」
「…」

Aさんが忘れて行った指輪。

この小さな塊にすら嫉妬が湧き上がる。

「でも偶然だね、Aさんが隣の部屋にいたなんて」
「そうですね、婚約者の方と一緒だったみたいですよ」
「指輪見つけたのがお前で良かったね」
「…そうですね」

本当は部屋に落ちていたなんて口が裂けても言えない。

僕は廊下で指輪を拾ったとﾕﾉﾋｮﾝに伝えた。

「しかも、よくAさんのだって分かったね」
「それは…あのもつ鍋屋さんで、見てたからです。それに廊下で2人に挨拶した後だったし…」
「そうだったんだ。偉かったな」

まるで子供を見る眼差しで僕を見るﾕﾉﾋｮﾝから目を逸らす。

指輪にﾒﾓを付けたのはﾋｮﾝだ。

「ﾒﾓ…何と書いたのですか？」
「内緒」
「え」
「あはは」

新潟公演まで約1週間。

空港までの僅かな移動時間。

東京に戻ってしばらく時間が過ぎたら

この数日の事を消化できるだろうか…。

曇り空を見上げながら考える。

ーRe:Re:Re:Re:Re:Re:受け取りました。

ありがとう。
元気でね、ﾁｬﾝﾐﾝ、幸せでいてね。
さようなら。ー

おそらく最後になるだろうメールが届いた時

小さな雨が降り始めた。

ーRe:Re:Re:Re:Re:Re:Re:僕には

いつも届いていたよ。
すぐに返事ができなくても、ちゃんと伝わっていた。
Aさん、ちゃんと幸せになってください。
どうか、僕という人間のせいで陰を作らないで。
僕が全部覚えておくから Aさんは僕の事全部忘れて
誰よりも幸せになって。

Aさん、ありがとう。ー

電源を落として

ﾊﾞｯｸﾞの奥底にしまった。

韓国へ戻ったらすぐに解約しよう。

そう、決心して

想いごと全部

心の奥の奥の奥の方へ沈めて

鍵を、架けた。