Re: (ページ13)

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012:隣　CM ページ13

明日には何事もなく普通に福岡を後にすると思っていた。

だから突然の再会に心を乱されただけだと

自分に言い聞かせる。

2日目の打ち上げが終わって

僕はﾕﾉﾋｮﾝより先にﾎﾃﾙに戻った。

最上階のスィートは 3部屋。

僕たちは贅沢な事に

3部屋のうち2部屋を独占している。

ルームキーを翳した時

角の部屋から一人の男性が出てきた。

いかにもﾘｯﾁな雰囲気を漂わせながら

長い廊下をこっちに向かって歩いてくる。

僕は気にせず自分の部屋に入ろうとした。

「ごめん今から帰るから……ってか、こういう事困るよ。彼女が怪しむだろ、それに、どうしてまだいるんだよ？昨日で終わりにするって言っただろ」

その人が僕の真横を通り過ぎる時

ﾌﾜﾘと懐かしい香りがしたのと

耳に飛び込んできた日本語。

「だから、困るんだよ。俺、Aを愛してるし夏には結婚するんだ」

Aという名前とともに

あの写真の男だと分かった。

そう思った時彼を乗せたｴﾚﾍﾞｰﾀｰが

ゆっくりと閉まった。

変な胸騒ぎがした。

僕には関係ない。

Aさんは…もう他人だ。

言い聞かせるように

冷蔵庫のﾋﾞｰﾙを流し込んで

熱いｼｬﾜｰを浴びた。

でも、あの男はこれから帰ると言ってた。

昨日で終わりにするとか…

Aを愛してるし、夏には結婚する…なんて

そんな言い方、本人にはしないだろう。

そのぐらい日本語を忘れかけていた僕にでもわかる。

だったら隣にいるのは…

「どうかしてる…」

もしAが隣にいるのなら

僕はどうする？

全ての過ちに頭を下げて

奪いに行く？

「本当にどうかしてるな僕…」

だけど。

またあの頃の古い携帯を手に

ずっとAさんからの最後のﾒｰﾙを見ている。

[Re:今、隣にいるかもしれない]

何度も書いたり消したりして

今日もこんな自分が馬鹿らしい。

「この携帯を解約するところから始めようかな……うわっ!!」

電源ボタンを押したつもりが

送信ボタンだったなんて。

心臓が抉れるほどに痛い。

居ても立っても居られなくて部屋を飛び出したら

同じ勢いで隣の部屋から、本当にAさんが出て来た。