001:Re: CM ページ2
『チャンミン 元気でいてね…今まで本当にありがとう』
Aさんからの最後のメールを
消せないでいるのは
きっと あまりにも子供だった自分が許せないから。
返信画面を開いたらいつも
タイトルの[Re:]という文字が
僕をキリキリと締め付ける。
「チャンミン、寒い?」
「いえ…」
「元気ないね。疲れた?」
「…大丈夫です」
-2012年
僕ら2人になって最初のツアー
2月11日の今日を迎えた僕は
この数日、ずっと眠れないでいる。
「…久しぶりだな、福岡」
「そうですね…本当に、久しぶりです」
-Aさん、元気ですか。
僕の好きな街に暮らしてた
僕の 好きな人。
蘇る記憶の中のどのAさんも
全部美しくて 可愛いくて 大人の恋人。
憧れが、ひとたび手に入ると
人間は 次から次に溢れ出る欲を許してしまうのだ。
僕は 彼女を好きになり過ぎて
心と反対の言葉で 幾度となくAさんを試した。
当然、僕が得たのは 膨らみ続ける自己嫌悪だけ。
いつの間にか 僕は、彼女から目を逸らすようになってしまった。
「お前は昔から本当にこの街が好きだよね」
「…そうですね」
-Aさん、ただいま。
-おかえり、チャンミン。-
もう、あの
優しい声を聴く事も
柔らかい肌に触れる事も
呼吸を合わせる事も
できない。
全部、できない。
[Re:]を消さないでと言ったAさんが懐かしい。
もし、Aさんの望み通り[Re:]を消さずにいたら
今頃 何か変わってたかな?
『Re:ごめん』
「…何やってんだろ、僕」
古い携帯を閉じて
ポケットに押し込む。
「行くぞ」
「…はい」
地面から突き上がる振動。
真っ赤な海が
思い出ごと 僕を包み込んで
瞼の裏
今日もAさんが笑っている。
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作成日時:2017年3月5日 12時