僕を拾ってください (ページ6)

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「誰が彼氏だって？」

「この辺りは物騒なんだな～確かに暗いもんなあ」

屋上から彼は下を眺める。

たしかに街灯は少なく、ポツポツとした光しか見えない。

「でも男と住んでるってこれで分かったから来ないんじゃない」

「住んでませんから」

「IDも見せたし、さっき犯人を追いかけたの見た？結構役に立つと思うけど」

「見ず知らずの男と住むほどアホじゃないですから」

でも、さっきはありがとうと言うと彼は目をパチクリとさせた。

ぴょん、と軽く飛んで私との距離を詰めてくる。

「イ・ハンギョル、20歳、高卒。今はいろいろあって家出中だけど掃除とか家事はやれるし、あんたに変なこともしない」

「自己紹介とかしなくていいから、早くどっかに行って」

「…俺がどっか行ったら空き巣がまた来るかもよ、大丈夫？」

「ひっ」

「番犬くらいにはなるからさ、少しの間泊めてよ。あんたのご飯も気に入ったし」

近づいてくる彼から離れようと、後ずさるとガラスのカケラを踏んだ。

さっきの破られたガラス片だ。

破られたガラスから黒い手が覗く光景がリフレインする。

本当にこの時の私はどうかしていた。

恐怖とパニックでどうかしていたのだ。

「1週間だけ泊めてあげるから、早く出ていって！あと変なことしたら通報するから」

そう言うと彼は犬のように嬉しそうな顔をした。尻尾をブンブン振り回す犬みたいに。

「あんたの名前は？」

「A。99年生まれで誕生日は早いからもう21歳。フリーター」

「A、よろしく。ハンギョルって呼んで」

こうして、ハンギョルと私の、奇妙な同居生活が始まった。

彼の部屋はリビングの押し入れの中になった。