隠し事 ページ10
女だということを隠すのが大変かどうかは、そうでもないかもしれない。
いつもダボっとしたパーカーにストレートなジーンズ。胸は胸を小さく見せるインナー。
全てはなんのためって、母のためだ。
「ジュギョン!」
22時を過ぎても人が溢れ返るホンデの大通りで、見慣れた金髪に声をかけると嬉しそうに振り返った。
「うわー!!久しぶり!元気だった?相変わらず髪の毛は短いなあ」
「ジュギョンも元気だった?痩せたね」
「そっちこそ!お母さんは?元気?」
元気だよと伝えながら人を避けて通りを歩く。
彼女は練習生時代の友達だ。彼女もまた事務所を辞め、今は働いている。
「ねえまだAのフリして生きてるの?お母さんがいないところではやめたらいいのに」
「まあ、そうはいかなくて。で、今どこで働いてるの?」
今日ジュギョンと会った理由は彼女から仕事を手伝って欲しいと連絡があったからだ。
「会員制のバーなんだけど人が足りなくて。結構芸能人とか来るから口の固い信頼できる人が良かったの」
「あーそういうこと」
友達との縁も切ろうと、全ての人との連絡先を絶った私をジュギョンだけは必死で探してくれた。まず叔父を探し、そこから私に繋がろうと連絡をしてきたが、特に練習生時代の友達とは連絡を取りたくないと何度も断ったが地方にまで探しに来たので根負けをしたのだ。
結局、全てを諦めて捨てたと思ったのに、ジュギョンとだけは繋がっている。
でも練習生時代に特に仲が良かったわけではなかった。
「不思議だよね。ジュギョンと私、そんなに事務所で仲良くなかったのに、私が消えたら必死で私を探してくれたよね」
「確かに。特に仲良くなかったね。あの時はびっくりしたなー。突然事務所辞めちゃって、消えるんだもん。そういえば芸能関係で働いてる叔父さんがいるって聞いたと思って社長に頼み込んで叔父さんを探したなー」
ホンデからタクシーに乗って移動する中で、いろいろ思い出して懐かしくなった。もうだいぶ昔の話の様に感じる。
「私、あなたに憧れてたの」
ジュギョンのその言葉にビックリする。
ジュギョンが、私に?
「一回事務所評価で一位になったことあったよね?私より後に入ってきた子が一位になったからよく覚えてる。普通は大喜びするはずなのに顔色一つ変えなくてさ。何こいつって思った」
でもね、と続ける。
「かっこいいと思ったの」
理由はわからないんだけど。ジュギョンは言いながら笑った。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時