またいつか3 ページ44
一通り導線合わせが終わると、いつのまにか日が落ちていた。
バックダンサーは先に帰ることになり、荷物をまとめているとスンヨンが声をかけてくる。
「夜空いてる?」
「空いてますけど…?」
「ご飯を食べに行こう」
彼と直接会うのは、解散以来のことだった。
「乾杯!」
グラスのぶつかる音と一緒に、ビールが溢れた。
泡が溢れないうちにグラスに口をつける。
ニット帽に眼鏡の彼は、一気にビールを飲み干した。
「うわぁ、飲みますね」
「気分がいいからね」
私は半分ほどガラスが空いたところで、焼酎を混ぜた。
「おおー、爆弾酒。そういえば飲めるんだっけ?」
「普段はあまり飲まないですけど…今日は私も気分がいいので」
スンヨンは一気に飲んだせいか、頬が赤くなっている。
二人でご飯に行くのも、二人でお酒を飲むのも今日が初めてだった。
「今までどうしてたの?」
「私ですか?」
いくつかつまみをお腹に入れながら、とろんとした目でスンヨンが聞く。
お酒はあまり弱くないのに、相変わらず酔いが顔に出る。
「いろいろです。今は仕事をして貯金しながらダンススタジオに通ってます」
「そうだったんだ。結局ハンギョルとドヒョンのファンミーティングでも会えなかったし、どうしてるか気になってたんだ」
「ああー。私はヒョン達がいたの知ってましたよ。下
から見てましたから」
彼らの解散後、私はみんなと連絡を取らなかった。
ただの一般人の私が連絡を取るのはなんだか違うと感じたからだ。
何人かは向こうから連絡をくれたけど、返信はしなかった。
心が痛んだけど、返信をせずにいたら連絡も来なくなった。私たちの距離はそれでいいと思った。
「電話したのに」
「あはは、知ってます」
ハンギョルとドヒョンのファンミーティングが始まる前、スンヨニヒョンから着信があったのは知っていた。
でも出なかった。
ここで電話に出たら一線を越えそうだったから。
もう住み込みの家政婦でもない、ただの私がアイドルの彼らと連絡を取るのは違うと思った。
(一度だけヒョンからの着信も出ちゃったし、スンウヒョンにも会っちゃったけど…)
身の程は弁えているつもりだったけど。
でももう、ファンとアイドルの関係ではない。
アーティストと、代打とは言えバックダンサーという関係になったからだ。
(それなら一緒にご飯行っても変じゃないよね)
そうじゃなかったら、今日も一緒に食事はしなかった。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時