またいつか2 ページ43
ずっとやりたかった事は、ダンスだった。
貯金を前にしてあまり悩むことはなかった。
新しい仕事を決めた足で、私はダンススタジオの契約をしに行った。
貯金はほぼ無くなってしまったが少しも惜しくはなかった。
彼らと過ごした日々はあっという間で、今思い返しても楽しい思い出がたくさんある。
その中で取り戻したのは、自分自身と自分の夢だ。
母親のために生きるのをやめ、自分のために生きるようになった。
アイドルになりたいという夢は、いつしかアイドルをサポートするという夢に変わっていた。
いつか、彼らに恩を返せるように。
「とは思ってたけど…」
ビルを見上げながら、何度も地図と睨めっこした。
うーんと唸りながら階段を登っていく。
受付で身分証を見せたらアッサリと中に入れ、レッスン室へ向かった。
案内されたレッスン室に行くと、オレンジの壁が一番に目に入る。
大きく壁に描かれた事務所のロゴに複雑な気持ちを感じた。
「うぃ、え、ふぁ…」
1文字1文字、指差しながら確認する。どう見ても間違いではない。私の勘違いじゃなかった。
ここは、スンヨニヒョンの事務所だ。
「あ、あーー!!??」
大声がレッスン室に響いて、私は慌てて振り返った。
目をまん丸にして私を指さす男の人がいる。
ニット帽に、スウェット。
よく知った切長の目が驚いて、猫みたいにまん丸な目をしている。
「あはは!ヒョーン!!」
「なんでいるんだよー!?」
代打で頼まれたバックダンサーは、スンヨニヒョンのバッグダンサーだった。
先生から送られてきたダンスのフリと音楽、アーティスト名を見た時はいやそんなまさかと思ったが間違いない。
私の夢は思わぬ形で叶いそうだった。
私とスンヨニヒョンの再会に、何が何だか分からない他のメンバーやマネージャーさんは取り残されてポカンとした顔で立っていた。
「スンヨナ…知り合い?」
男の人に話しかけられて、笑いすぎて泣いているスンヨンはやっとのことで返事をした。
「まあそんなとこです」
「どういう知り合いだよ…?」
怪訝そうな顔で見られて、スンヨンが私を見た。
一時期一緒の宿舎に住んでいた知り合いです、なんて言えないだろう。
「いや?まあ、人生いろいろあるんですよ。ね?」
「はい」
スンヨンは目を細めて私に笑いかける。
懐かしい、大好きなあの笑顔。
私達にしか分からない事情に、周りは困った顔をしていた。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時