またいつか ページ42
照明がキラキラ輝くステージも。
体が痺れるほどの音響も。
全てが初めてだった。
彼らがいなかったら、ここまで来れなかった。
季節は巡り、春になった。
いつか彼らと出会った季節が、そこまで近づいてくる。
朝起きて顔を洗うと、鏡には私の顔が映し出されていた。
誰でもない、私の顔。
濡れた髪を乾かしながらメイクをする。
長いまつ毛に、キラキラと反射する瞼。
あれだけ慣れなかったメイクも今じゃ20分で終わってしまう。
リップを塗って髪をカールさせたら完成だ。
短かった髪は伸びて鎖骨を超えた。
外ハネのワンカールにスタイリング剤をつけて、前髪も巻く。
少し眉毛より上の前髪が艶やかに光っていた。
(変わったなあ)
我ながら、1年前とは考えられない変身っぷりだ。
私はいつか双子の兄のふりをしていたことがあった。
遠い昔のように思えるが、少し前のことだ。
その上、兄のフリをしてアイドルの宿舎で住み込みの仕事をしていた。
今思えば、ありえない話だ。
(思い出すとなんだか笑える)
玄関で靴を履きながら、一人で笑ってしまった。
マンションを出ると目の前は大通りだ。少し走るとすぐにスタジオに着く。
「おはようございます」
スタジオに入り、挨拶をするとすでに練習を始めている人がいた。
私がアップを始める頃にはゾロゾロと人が増えていた。
男のふりをして住み込みの仕事をしばらくしていたおかげで、だいぶ貯金ができた。
家賃と光熱費、食費は全て会社が負担してくれていたので今まで以上に貯金はしやすかった。
そのお金で私は、やりたいことをやることにした。
「急で悪いんだけど」
少し強面の先生が前へ出ると、みんなの動きが止まった。私も自然と背筋が伸びる。
「今度バックダンサーをする子が一人怪我をしたから、このクラスから一人出てもらおうと思ってるの」
鏡に先生の鋭い目が写る。「誰だろう」とざわつく中、先生と目があった。
「あなた、いけるわね」
突然のことにうまく返事ができなかった。二、三度周りを見渡して、ようやく先生が指さしたのは自分のことだと分かった。
「は、い！」
「頼んだわ。今日はもう良いからそっちのスタジオに移動して練習を始めてくれる？悪いけどフリは1日で頭に入れて」
場所とフリは携帯に送ったから。
それだけ言われて、私はレッスン室から退室をした。
「ここって…」
レッスン場所を確認して、私の心臓はうるさく高鳴った。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました！！読んでいただいてありがとうございました！！ (2020年9月16日 11時) (
レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです！これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様＞コメントいただけて凄く嬉しいです！今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです！ 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです！これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cham-chi | 作成日時：2020年9月5日 0時
