番外編、イ・ハンギョル3 ページ41
大きな袋を2袋、二人で半分ずつ持ちアイスを食べながら長い坂を登った。
アイスなんか買う気はなかったがハンギョルが食べたいとゴネるので仕方なく二本入りを買って、二人で割って食べた。
彼の方が足が長いせいで私は2倍歩かないといけない。少し遅れると振り返って何気なく歩調を合わせてくれた。
「お前いつも一人で荷物持ってんの?」
「そうだよ」
「タクシー使えよ、タクシー!」
「勿体無いよ。私はちゃんと足がついてるから大丈夫」
「なんだそれ」
は、と彼が笑い出す。子供みたいに無邪気な笑顔だ。
つられて私も笑ってしまう。
「アイス、溶けそうだぞ」
「何が?あ!」
気付いた時にはもう遅く、笑っている間にアイスが溶けて、手に垂れた。
「あーあ勿体な」
両手が塞がっているせいで、手に垂れたアイスをどうしようかと思っていると先に食べ終わったハンギョルが私の腕を掴んで、べろりと舐めた。
「ぎゃ!!」
赤い舌がぺろりと唇を舐めあげて、彼は不思議そうな顔をしている。思わず短い悲鳴をあげて買い物袋を落としてしまった。
「おい、りんご!」
漫画みたいに坂をゴロゴロと転がっていくりんごを長い足が追いかけていく。私はさっき起こった出来事を頭が処理できず、フリーズしたまま立ちすくんでいた。
気がつくとハンギョルはリンゴを拾ってもう戻って来ており、私の手から落ちた買い物袋を拾い上げ中身を確認していた。
「買ったもの落とすなよ〜」
そう言いながら袋を持ち上げ、両手に荷物を持ってくれる。まだ動けないで固まっている私を、少し歩いて振り返った。
「置いてくぞ」
口元がニヤッと笑って走り出した。その瞬間、氷が溶けたように慌てて私も走り出す。
わざとスピードを落として私が彼を抜かし、そうすると彼が私を抜かす。
子供っぽい遊びをしながら宿舎へ帰った。
イ・ハンギョル。
同い年のくせに子供っぽいと思えばドキッとするくらい大人っぽい時もある。
(変なやつだ)
舐められた手首は、いつまでも熱くて、料理をしながらそんなことばかり考えていた。
それからというもの、私が買い出しに行くと分かると「アイス買って」と犬のように後をついてくるようになった。決まって帰りには二人でアイスを買って、割って食べた。
重かった荷物が半分になった。
舐められた手首を無意識に片手で隠していたのは、彼には一生秘密だ。
おわり
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時