冬の月 ページ29
ひとしきり泣いた私は顔をあげる。
少し眉を下げて困った顔。その顔を見ると胸の奥がチリ、と焦げ付くようだった。
「今まではお母さんのための人生を歩んできたかもしれないけど、もういいと思う。お兄さんもそれを望んでるんじゃ無いかな」
「そうでしょうか…」
「すぐに生き方を変えるのは難しいけど、今のままの君が好きだよ。僕が許すから」
許す。
簡単そうに見えて、難しいことだ。
私の場合誰に許してもらえば良かったのか。
「許してくれますか…。ずっとこの5ヶ月間、騙していたのに」
「僕は許す。みんなはどうかわからないけど、きっと全部話したら許してくれる。そういう人達だよ、みんな」
許してくれるだろうか。
正直に話したら、嫌われないだろうか。
「明日みんなに話します…。あ、もう今日ですね」
時計は12時を回っていた。スンヨンから体を離して、1歩下がる。
彼をまっすぐ見た。
月明かりが私たちを照らし出す。
月明かりとライトが彼の顔を青く染める。
「ありがとうございました…本当に」
自分が変わるきっかけをくれた。
弱い自分から、変われた。
救われた。
彼に。彼らに。
偶然ではなく運命のような11人に。
「出会えてよかったです。みんなを好きになった、変わらせてくれた。救われました」
そう言って微笑む。
彼に話してよかった。
月の様に暖かく心を照らし、静かな海の様に青く染めてくれる人。
「名前、本当はなんていうの？」
「え？」
部屋を出ようとするとスンヨンが後ろから声をかけた。
「Aってお兄さんの名前なんじゃないの？本当の名前は何て言うのかなって」
「あ、えっと…」
小さい声で名前を呟いた。
久々に口にした。忘れかけていた私の本当の名前。
「いい名前だね」
また優しく微笑んだ。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました！！読んでいただいてありがとうございました！！ (2020年9月16日 11時) (
レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです！これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様＞コメントいただけて凄く嬉しいです！今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです！ 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです！これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cham-chi | 作成日時：2020年9月5日 0時
