晴天 ページ20
私が泣き止むのを待って、スンヨンはタクシーを呼んでくれた。
デビューしてから彼らは外を歩くのも容易じゃなくなってしまった。良いことでもあり、悪いことでもある。
でも彼はこっそり散歩する事もあるらしい。
タクシーの中、スンヨンは何も聞いてこない。窓に肘をついて鼻歌を歌っている。
無言でも息苦しくない、この空気が好きだった。
「ちょっといい笑顔になったよね」
「え？」
スンヨンがこちらを見る。
「前より自然に笑えてる気がする」
「そうですかね…。なんか、スンヨニヒョンは鋭すぎて怖いです」
この人には全部バレてしまっている気がする。
隠している事も、捨てたものも。
ふざけているように見えて、真剣だったり。
考えてないように見えて、グループで一番思慮深くて思いやりがある。
でも勝手に暴こうとはしない。
「前髪、切ってあげようか」
下を向くだけで、すっかり私の目元を隠してくれる長くなった前髪。
外の世界から私を守ってくれるような気がしていた。
「切ろう…かな」
「そうこないと！帰ったら切ろう。いいかな」
強制はしてこない。でも、彼になら切られてもいい。
「ヒョン、人の髪の毛切ったことあるんですか？」
「ない」
「えー！任せて大丈夫かなあ」
「僕はオールラウンダーだよ。任せて」
それ関係あります？と笑うとスンヨンも釣られて笑う。
タクシーを降りた頃にはすっかり空は晴れていた。
「天気が良いと気分も良いとか言うじゃないですか」
「そんな事も言うね」
「でも天気に関係なく、私の心はずっと土砂降りで」
話しながら宿舎の前にできている水溜りを飛び越える。水溜りが反射して、地面に空ができている。
「でも、久しぶりに心の中が晴れた気がします」
「天気に気分は関係ないと思うよ」
でも。
「Aの心が晴れて良かった」
心地よい、少し高めの声。
１１人全員個性があるけど、歌に彼の声が入るだけでまた違った印象を抱かせてくれる。そんな声。
「いい笑顔になったと言ってくれましたよね？」
「うん」
「みんなのおかげです」
本当にそう思う。1人だった私に、気にかけてくれる人間ができた。それだけで元気が出る。毎日生きていける。
「そうだといいな」
「そうなんですよ」
正直に自分の気持ちを言える人ができた。
私が話し出すまで根気よく待ってくれる人。
受け止めてくれる人。
慰めてくれる人。
スンヨンが切ってくれた前髪は、予想以上に上手に切れていた。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました！！読んでいただいてありがとうございました！！ (2020年9月16日 11時) (
レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです！これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様＞コメントいただけて凄く嬉しいです！今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです！ 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです！これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cham-chi | 作成日時：2020年9月5日 0時
