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追悼 ページ18

毎日のようにスケジュールに追われ、海外に行くことも多く宿舎にいないことの方が多かった彼らを最近は宿舎で見ることが多くなった。
やれ音楽番組だなんだと借り出されていた私もめっきり外へ出なくなった。アルバムの売り上げもいい、驚異の新人ボーイズグループとして順調な道のりを駆け足で歩んできた彼らに暗雲が立ち込めた。

番組の不正問題だ。
事務所は騒然。彼らもスケジュールが減りつつあった。


(せっかくこんなに売れてるのに)

一年に何組のボーイズグループがデビューして、何組が数年後残っているのか。それぐらい韓国のアイドル業界は厳しい。
しんどいだろうな。みんなどれだけの血の滲む努力をしてデビューを夢見てきたのか。
少しだけ気持ちが分かるからこそ私も苦しくなる。
でも、私にできることはない。

季節が変わり肌寒くなってきた頃。
私にも憂鬱な出来事が迫ってきていた。


今日は兄の命日だ。

母を迎えに行き車椅子に乗せ、タクシーでしばらく行くと開けた墓地が広がっていた。スロープを降りて車椅子を押して歩く。
母は「いい天気ね」とか「大学はどう?」とか1人で楽しそうに話している。適当に話を合わせながら白い壁にかかった写真の前に車椅子を止めた。


「母さん、今日は命日なんだよ」

兄さんの遺影を母はぼーっと見つめる。持ったきた花を供えると、私とそっくりな顔が写真の中で微笑んでいた。


「ああ、そうだったのねえ。私ったらうっかりしていて…」

ポロリと涙を流す。その姿に私はギョッとした。
母が泣いているのを見るのはあの日以来だったからだ。


「もしかして…私が分かる…?」


私が兄ではないと思い出したのか。ずっと私に微塵も興味がなかった母が遺影を見て泣いている。
お金は出してくれるけど、それだけで。
ずっと欲しかった愛と私への関心はくれなかった。
それは兄さんだよ。私はここにいるんだよ。
そう言いたかったのに、急に喉が枯れて声が出ない。


「お前も妹の分まで大学を頑張るのよ」


母が私を見上げる。




「はい、母さん」


今度はちゃんと声が出た。

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作品ジャンル:恋愛
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時

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