夢を見ている間に

水没 ページ16

「本当…ごめんね」

「気にすんなって」

「しょうがないよ」


私が謝るとハンギョルとスンヨンが口々に声をかけてくれる。
２人の部屋の、２人のベッドの中間地点に敷いた布団の中で申し訳なく思った。


事の発端は数時間前。
先日から調子の悪い部屋のシャワーをどうにか直そうとしたのだ。水しか出ないと思ったらお湯が出て、しばらくよかったのにまた水しか出なくなったのだ。
ネットで直し方を調べて自分で直そうとしたのが悪かった。どこを捻ったのがダメだったのか、配管から水が漏れて止まらなくなってしまったのだ。

「どうしよう…」

漏れたところを手で止めていたのに、その甲斐もなくみるみるうちにバスルームから水が溢れ出した。
ちょうどオフで宿舎にいたハンギョルに助けを求めたが、彼が配管を触って力技で水を止めた頃には私の部屋は水浸しになってしまっていた。



「ごめん。ハンギョルもびしょ濡れだ」

「やっばいな、これ！今日どこで寝んの？」


なんだか楽しそうだ。

「いや、ベッドで寝るよ」

「こんな海みたいな部屋のベッドで？」

海だよ、これとハンギョルが言う。
2人で部屋を見回す。ベッドは無事だがカーペットも床も水没して、たしかに海みたいだ。

「まあ、寝れるでしょ」

「俺たちの部屋で寝れば？明日もオフだしスンヨニヒョンも作業しないだろ」

楽しそうに水を蹴る。音を立てて水面が揺れた。ハンギョルは子供のような顔をして部屋の水没を楽しんでいる。


「明日になったら乾いてるって」

「乾くわけないでしょ」


何言ってんだと思いながら返事をする。
ハンギョルは同い年のくせに、子供っぽいのだ。


スンヨンに事情を話したら快くオーケーしてくれて、一晩だけ寝かせてもらうことにした。
海のような部屋にはありったけのバスタオルを敷いておいた。ハンギョルの言うように乾くわけはないが、明日業者を呼ぶまでの応急処置だ。


真っ暗にした部屋の中で2人の息遣いだけが聞こえる。


「あー肉が食べたい」


静かな空気を破ったのはハンギョルだった。
その言葉に私もスンヨンも笑ってしまう。

「次はデジカルビでもペダルしたら？ドヒョンのために」

「明日はデジカルビでも食べに行くかぁ？」

楽しそうにスンヨンも肘をついて体を起こす。３人で大笑いをした。それにしても私の部屋は傑作だったとハンギョルも笑う。


「僕もここで寝かせて〜」

ヨハンにからかわれて、たまらず逃げ出したドンピョがドアから顔を覗かせていた。

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