驚く ページ14
ハン・スンウという男はそこまで喜怒哀楽が激しく顔に出るわけではない。
それでもバスルームに入ってきた彼はひどく驚いていた顔をしていた。
(私が男じゃないって、バレた…っ)
「スンウヒョン、晩ご飯は何頼みます?」
バスルームの外でまたヨハンの声がする。
このままではヨハンにまでバレてしまう。どうしていいか分からず体を隠すように自分の肩をギュッと抱きしめた。
「ん、あぁ、なんでもいいよ。みんなで決めて」
我に帰ったスンウがやっと絞り出すように返事をする。
「Aが作ったおかずもあるんでそれも食べましょう。そういえばAがいないんですよね」
ヨハンの声ががまた近づいてくる。
私は床に座り込んで壁の隅へ後ずさった。
自然と目の前にいるスンウと目が合う。
「俺は見てないけど。軽くシャワー浴びたら直ぐいくよ」
「分かりました〜」
足音が遠ざかる。
ほっとしたのも束の間、この状況をどうしていいか分からなくて私は下を向くしかなかった。
どうしよう。なんて言おう。体を見られた。
もうここでは働けない。
(いやそうじゃない…みんなに嘘をついた…)
しばらく動けないでいると頭の上からタオルを被せられた。
「スンウ…さん」
女とバレた今ヒョンと呼ぶのも変だし、オッパもおかしいし、さんと呼ぶしかなかった。
「…とりあえず服着な。まだ外に誰かいるかもしれないし、俺は向こうむいてるから」
顔を上げるとスンウはゆっくり後ろを向いた。彼の背中が見えて、少しだけ肩のタトゥーが目に入る。
トイレの上に置いておいた服を手早く着る。まだ心臓がバクバクしていた。
「えっと…あの、着替え終わりました」
「ん。俺もこんな格好で悪いね」
彼は困ったように眉を下げて謝った。こんな状況にも関わらず鎖骨と、肩と、腕に入ったタトゥーに目がいく。タトゥーが入っているのは知らなかった。
「騙していてごめんなさい」
「何を?」
「あの、スンウ、さんを。あとみんなを」
ずっと騙してました。そう言うとまた困ったように眉を下げる。
「まあ、何か事情があるんだよな。別に誰にも言わないよ」
「…言わないんですか?」
「言って欲しいのか?」
そ、そうじゃなくて、と慌てて言うと少しだけ彼は笑った。
「ごめん意地悪した。だからおあいこにしておいて」
「そんなこと…」
「ほら俺シャワー浴びるから出て」
「でも」
「それとも一緒に浴びる?」
ニヤリと笑った彼はいつもの彼だった。
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cham-chi(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!今更な気もしたんですがそう言って頂けて本当に嬉しいです。励みになりました!!読んでいただいてありがとうございました!! (2020年9月16日 11時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - X1の作品が少なくなり寂しい思いをしていまきたが、更新通知が来るたび、まだまだ私のように応援している人がいるんだなと思い嬉しくなりました。素敵な作品に出会えて嬉しかったです!これからも頑張ってください(^^) (2020年9月16日 2時) (レス) id: 70fff2cd4d (このIDを非表示/違反報告)
cham-chi(プロフ) - カナル式さん» カナル式様>コメントいただけて凄く嬉しいです!今更書くのはどうなんだろうと迷っていたんですがそう言っていただけて書いた甲斐がありました。下手くそな文章ですがもう少しお付き合いください。いつもありがとうございます。 (2020年9月11日 7時) (レス) id: 019756ae7d (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - この作品すごく好きです! 今はX1の作品があまり無いのでこうやって更新して下さるのが嬉しいです!これからも続きを楽しみにしています(*^^*) (2020年9月11日 0時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cham-chi | 作成日時:2020年9月5日 0時