↓ ページ30
.
『はい、ちょっとだけね…』
「ぎゅぎゅゥ…くるる…」
『分かってる分かってる、恥ずかしいけど我慢！』
細腕の割には力強く上顎を抑えられる。あぁ、とうとうやってきた。シャオロンは非難の声を隠さず終わる時を待つ。彼女は【ちょっと】と言うが、彼にとってはこの時間が一位間にも二時間にも感じられるものだ。
多くのドラゴンに備わっている武器は爪、尾、そして牙である。
その一部を、メスに触られ弄繰り回されるなど！シャオロンの本能が嫌がっていた。
しかし【嫌がる】理由もある。
それは保護員という隣人であるAを少なくとも【雌】として見ている…と言う事だ。
良く分からない言葉を呟きながら、彼女がバインダーに何かを書いていくのをじとりと見詰める。他にやる事も無ければ仕方あるまい。シャオロンはどうにかこの
あ、今日は何時もの空と同じ色をしたバインダーじゃないんや。だとか、前に教えて貰った俺の目の色のバインダーもあるんかなぁ。だとか。
しかし幾ら視線や感覚をAから逸らしても、口の中を動く物体―十中八九彼女の手だろう―が横入りして、また羞恥心がぶり返す。夏日でも無いのにじりじりと身体を内面から焼かれている様だった。
獲物を狩り、縄張りを守り、そして種類によっては求愛にも使われる牙を、大好きな彼女に触られている彼の内心の荒れようと言ったらないだろう。食べたい訳じゃ無い。だけど今咥内にある愛しい存在を甘噛みしてしまいたい。あぁでも人間は驚いてしまうから。言葉も通じず、鈍い彼女に歯噛みする。
『終わったよ、お疲れ様。』
「きゅ…」
『いいこね。』
「ゔゥ、ぎゃう。」
『…どうしたの？』
シャオロンは月に一度、とある悩みに苛まれる。
悩みと言えばそう、口腔検査。
言葉も通じない、生きる時間も異なる。
更には意中の彼女は鈍く、己の
何もかもが違う、言わば未知の領域であるこの感情と未来はどうしてくれようか。
可能な事ならば瞳だけではなく、彼女の思考も自分の色で染め上げてしまいたい。
シャオロンは二つとない色合いの瞳を瞬かせ、それからそっとAの脇腹へ頭を差し込んだ。いつか、いつか、彼女を自分の色で満たしたいと思う。そう、真白いキャンバスに描く様に。パレット一杯に自分の色と愛を乗せて！
言葉は無くたって、愛は伝わるだろう？
Fin.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 468人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
都築(プロフ) - 失礼します。完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ好きだったので完結と聞いてちょっと残念です。次の作品も楽しみにしてます。 (2021年7月10日 0時) (
レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
都築(プロフ) - 続々編？おめでとうございます!!更新再開してくださって嬉しいです。これからも応援してます。体調には気をつけて頑張ってください。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：チャムチャム
| 作成日時：2021年4月2日 23時
