先に好いたのはどちらか？ 水縹 ページ22
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付喪神×人間
付喪神様と、女の子と、お節介なおじいちゃんの話。
――――――
祖父の遺品整理をした。
ガンで死んだ祖父は先祖の意志を引き継いだ薬師で、茶目っ気のあるパワフルな人だった。知識と好奇心に満ちた祖父は、私が幼い頃からの刺激そのもので、何時も私に新しい世界を教えてくれる。父よりも祖父が好きだった記憶があるくらいだ。
『あっつ…』
そんな祖父が居なくなってから数日。実感の湧かない中途半端な損失感を抱いたまま、私は祖父の遺した手紙の通りに思い出の家へと戻って来た。実に、十年ぶりである。
じりじりと責めるように照り付ける日差しは湿気と相まって憂鬱だ。
庭の奥にある蔵は開け放たれ、記憶にあるよりも随分とスッキリしているように見える。私は迷いなく蔵の中へと足を進めた。
この蔵で、私は沢山のことを祖父から教わった。
一日中籠り、蔵にある壷やら薬棚やら、生薬や山草の話なんかもしてくれたのも此処だ。私が、東洋医学の道へ進んだ、最大の理由。
少しだけかび臭いのは昔から変わっていない。が、どう見ても清掃や管理はされていない様だった。祖父が入院したあの日から、きっと面倒くさがって誰もこの蔵に近寄らなかったのだろう。酷い状態だ。
むず痒い鼻を擦りながら、最奥へ向かう。小高い窓から光が差し込んでいる。埃がキラキラと反射しているのが見えた。その際には小さな学習机と、それに見合った椅子、そして大きな薬棚と立派な薬研が記憶のままそこに収まっていた。
『懐かしいなぁ…』
ここだけ埃が薄い、気がする。
薬研に積もった埃を掃い、まじまじと見た。思い出すのは何度も私の目の前で薬研を使って見せてくれた祖父の腕だ。大好きな祖父の足元に収まり、歳の割に太い祖父の腕を、すり潰れていく生薬―当時はそこらへんの草だとばかり思っていた―を飽きもせず見たものである。
「あれぇ、珍しいお客さんかと思ったら。」
思い出に浸り始めた脳みそが覚醒する。
勢いよく振り返ると、そこには懐かしい人がいた。
『しんぺいさん…！』
「や、久しぶりやねA。」
ん〜おっきくなった、と親戚の様に頷く目の前の彼は、幼い頃の記憶に色濃く残る人の一人だ。彼はこうして足音も無く突然現れる。
初めて出会ったのは、私が誤って蔵の奥に閉じ込められてしまった時のことだ。
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都築(プロフ) - 失礼します。完結おめでとうございます!!めちゃくちゃ好きだったので完結と聞いてちょっと残念です。次の作品も楽しみにしてます。 (2021年7月10日 0時) (
レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
都築(プロフ) - 続々編？おめでとうございます!!更新再開してくださって嬉しいです。これからも応援してます。体調には気をつけて頑張ってください。 (2021年4月3日 18時) (レス) id: e5f03274fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チャムチャム
| 作成日時：2021年4月2日 23時
