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瓦礫の山を幾つか飛び越えて、戦い前に昼寝をした辺りまで戻ってきた。
胸が詰まるような酷い刺激臭がする。
しかし物音は一つもしない。
…酷いじゃないか。
こんなにボロボロにしていたらとんとんやひとらんが怒るのに。
『…！！』
私は匂いを嗅ぐために地面に向けていた顔を勢いよく上げた。
聞こえる。細くて弱い、だけど確かな呼吸音が。
うだうだ考えるよりも先に、身体が動く。
その呼吸音の先に居てほしい様な、居ないでほしいような。
ひゅぅ、と細い呼吸は心許ない。
ガサリ、と目の前の生垣を掻き分け、顔だけを出した。
気が動転して視点が定まらない。
嫌になるな。目の前の赤い塊はなんだ？
鼻が曲がりそうなほど蒸れる血の匂い。
姿勢を低くして、近寄る。
その人の匂いが血のせいで分からない。よく顔を見せてみなよ。
音を立てずスルリと近寄る。
踏んだ太ももは未だ柔らかい。
カーテンの様に邪魔な髪を顔で押し退けた。
『…』
あれ、おかしいな。ご主人だ。
仲間は何処に行ったの？何故独りでこんな所に？
起きて、起きてよ。
まだ眠る前に聞きたいことがあるんだ。
三度目の体当たり。
やっと目の前の重たい瞼が開けられた。
『みゃ…』
「……A」
おはよう、そうだよ。私だ。
起きなきゃ、たぶん縄張りを広げにご主人が撒いたであろう輩が戻ってくる。
ね？だからさ、
にゃうにゃうと伝わるハズも無い言葉を投げかける。
この数年で嫌と言うほど感じた、種族の違い。
「逃げ、普通の…猫として生きるんや」
あぁ、本当にこの怖がりは。
何故私の言葉が聞こえないの人間は！
ご主人が一緒じゃないと意味が無いのに、
なぜそんなに無責任なことを言うの。
私は、後で必ず合流できると思ってご主人の肩を降りたんだから。
だからお願いよ、その私の嫌いな臭いを落としてきてちょうだい。
死の匂いを、連れてこないで。
私は、もう普通の猫として生きる道をとうの昔に捨てているというのに、今更成れって？
なんて惨い主人だろうか。
(止まらない血を、筋肉と服でむりやり押さえ込んでなんとかAに説く。
にゃあとも鳴かずに此方をただ見つめるAは、酷く傷ついている様にも見えた)
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すみれいん(プロフ) - 今回は絶対泣かないからな！と意気込んで読みました。結果我慢できずに泣きました。何回読んでも感情移入して泣いちゃうって凄いお話だと思います。ありがとうございます！ (2022年2月27日 17時) (
レス) @page14 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀×macaroni - ガチで号泣しましたね。その状態で親たちの前に行くとめっちゃ心配されました。というか久しぶりに泣きました…神作品をありがとうございました (2021年10月24日 8時) (レス) id: 7df46c6c74 (このIDを非表示/違反報告)
結奈(プロフ) - 久しぶりにこんなに泣きました、、神作品をありがとう。 (2021年10月1日 17時) (レス) @page14 id: dfbb799ac9 (このIDを非表示/違反報告)
青空 - 泣いてしまいました、2、3回読みましたが全て号泣しました。頑張ってください！ (2020年8月21日 23時) (レス) id: c8e497a2f2 (このIDを非表示/違反報告)
彗(プロフ) - 泣いた (2020年8月14日 22時) (レス) id: b35ac9e42f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チャムチャム
| 作成日時：2020年7月26日 21時
