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あれから何度か陽が落ちた。
そして同じ回数だけ陽が昇った。
『…！』
やっとご主人からのブザーが鳴る。
首輪につけられた小さな箱。
これが呼び出しブザーだ。
ご主人が持っている薄い箱を操作すれば鳴る仕様らしい。私は複雑なことは分からないからその位しか知らないが。
高周波数のブザーは人間には聞こえない。
ろぼろ曰く、「8000㎐やからな！！」だと。
自分の持てる最高速度でご主人の元へ向かう。
定期的に聞こえる地面を鳴らす音を探し、窓から飛び降りた。
城からほど近い藪から音が聞こえる。
見つけた見つけた、こんな所に居たのねご主人。
『にゃぅ』
「A、はよ！」
上で腕を広げるご主人は随分焦っているようだ。
私は直ぐにご主人の膝を借りて肩に飛び乗った。
ご主人が布を被った事で私の体が殆ど隠れる。
そっとご主人の後ろ髪に体を押し付け、首裏からドッ、ドッ、と走る
わずかに揺れる暗闇の中、
がちゃがちゃと煩い音が聞こえる。
外からも、ご主人の右耳からも。
私はここでやっと察した。
ご主人は私を待っていたのだ。
こんなに、追われているのに。
ご主人が振り返った時に見えた影は、私の視力じゃ奥まで数えきれないほど多かった。どれもが長い武器を持っている。
「おい、そっちは！未だ生きてるんやろうな！？」
珍しくインカムに向かってご主人が吠えた。
行きの数倍の速さで撒いているからか、息が荒い。
私を気遣って揺れを最低限に抑えているのを、私は知っていた。それが、ご主人の全力を縛っているなら。
「あッ、A！！」
私はご主人の肩から飛び降りた。
こうやって呼びかけを無視したのは初めてのこと。
後ろからは未だ敵の怒鳴り声が聞こえる。
ご主人が未だ私に呼びかけている。
まったく、何をしているのか。
私は猫だ。命はまだ8つあるし、幾らでも逃げ果せる術は持っている。
私を気にしているせいでご主人が狩られそうならば、
「A、戻って来い！逃げるんや！！」
『……』
ー私はその日、初めてご主人に牙を向けた。
背中を丸めて、『
伸ばされた手を拒絶したのだ。
(初めてAに拒絶をされた。
でも目を見ると怒ってはいなくて。
信じようと思った。
絶対に逃げろよ、と消え入る声で呟く。
彼女が小さく返事をした気がした。)
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すみれいん(プロフ) - 今回は絶対泣かないからな！と意気込んで読みました。結果我慢できずに泣きました。何回読んでも感情移入して泣いちゃうって凄いお話だと思います。ありがとうございます！ (2022年2月27日 17時) (
レス) @page14 id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀×macaroni - ガチで号泣しましたね。その状態で親たちの前に行くとめっちゃ心配されました。というか久しぶりに泣きました…神作品をありがとうございました (2021年10月24日 8時) (レス) id: 7df46c6c74 (このIDを非表示/違反報告)
結奈(プロフ) - 久しぶりにこんなに泣きました、、神作品をありがとう。 (2021年10月1日 17時) (レス) @page14 id: dfbb799ac9 (このIDを非表示/違反報告)
青空 - 泣いてしまいました、2、3回読みましたが全て号泣しました。頑張ってください！ (2020年8月21日 23時) (レス) id: c8e497a2f2 (このIDを非表示/違反報告)
彗(プロフ) - 泣いた (2020年8月14日 22時) (レス) id: b35ac9e42f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：チャムチャム
| 作成日時：2020年7月26日 21時
