第4話 ページ11
次の目的地とはどこなのか。新世界である。察しのいい読者はもうお気づきであろう。そう、通天閣に行くのである。あのビリケンさんがご鎮座されている通天閣である。とりあえず地下を楽しみながら通天閣を上っていく。チケットを買った瞬間からが僕の「奥の手」の始まりである。さすが彼女、もう察したようだ。
じつはこの通天閣、エレベーターの待ち列の中にフォトコーナーを設けているのだ。スタッフが写真を撮るのでほぼ強制イベントである。この写真さえ買えば念願のツーショットが手に入る。勝利は目前だ。
「はいこっち見てー」
「つうてーん(パシャリ)かくにんします」
「バッチリ綺麗に撮れタワー!」
僕にとってはおなじみの声が聞こえる。通天閣ダジャレフォトだ。ただ、隣の彼女には恐怖以外のなにものでもないだろう。
自分たちの番が回ってきた。もちろん僕はノリノリ。「バッチリ綺麗に撮れタワー」ジェスチャーもしっかりこなした。完璧である。さてあとは写真を買うだけ…。なのだが、何故だろう。隣から殺気を感じる。おそるおそる振り向くと、彼女、ジャ○ーズの話のときと同じような表情で「買わないよね…?」と聞いてくる。怖い。ほぼ脅迫じゃないか。絶対買えない。仕方ない、怒られて別れられるよりはましだ。今回も諦めるしかないか…。仕方がない、買いません。負けました。
ここからは特に何も事件は起こらず、通天閣に上ったあと大阪駅に戻ってきた。もちろんビリケンさんの足の裏も撫でたけれど。ここには僕オススメのケーキ屋があるのだ。向かった先はグランフロント大阪。そこの中のキルフェボンのタルトが絶品なのだ。(実在するお店なので興味がある読者は是非一度食べてみることをオススメします。)珍しく空いている。並んでいない…。ふと二条城での苦い経験が蘇る。しかし、今回はしっかりリサーチ済みである。まだイートインはやっているはず…!
店に一歩踏み入れた瞬間、タルトの上品な香りがふわっと僕たちを包む。もう今日は写真は諦めた。今はただ彼女とタルトを堪能したいのだ。タルトを注文し、イートインスペースへ。紅茶が運ばれてくる。もうすでに気分は中世貴族。スプーンをタルトに入れる。サクッ、と歯切れの良い音がする。一方彼女は慣れていないのか、果物てんこ盛りのタルトに悪戦苦闘しているようだ。微笑ましい。
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作者名:チャルさん x他3人 | 作成日時:2020年3月30日 23時