人はかわるよ。 ページ10
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烏野と青葉城西の練習試合が始まったとき、私はいなかった。
(何でわざわざ行かなきゃなんないんだ。)
録音したからなんだというのだ。
約束?勝手な押し付けだ。
それを私が守らなきゃだめな理由なんてどこにもない。
…自分が逃げるという行為をしていることに嫌気がさす。
そう、私はバレーボールから逃げているのだ。
怖くて、悲しくて、虚しい思いなんかもうしたくない。
「前の私なら、向き合ってたのにな…」
「前のAちゃんなら、逃げたりしないのにな。」
私の言葉と同時に別の方向から声がする。
声がした方を見ると…
「及川さん…」
及川さんがいた。
「Aちゃん、行くって言ったよね?
なんで来てないの?いいかげん俺も怒るよ?」
真剣な顔で及川さんが話す。
「行く気分じゃなかっただけです。」
私がそう言うと、違うでしょ、と私の言葉を遮る。
「は?」
「飛雄ちゃんがいるから…とか?」
「!!」
「図星か。」
…たしかにその通りだった。
中学最後の影山はすごく私に似ていた。
だから、見るのが怖かった。
「Aちゃん」
及川さんは私の手を握り名前を呼ぶ。
「君に何があったのか、俺にはわからない。
…でも、人はかわれる。」
「!!」
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作者名:ねお | 作成日時:2022年4月29日 19時