◇10 違和感 ページ10
半年くらい前、たまたま通りかかった道で、1人の見慣れない女が倒した悪魔の処理をしているところを見かけた。
それがAとの出会いだった。
どこか気だるげで、掴みどころのない雰囲気だなと思った。
しかしその後も駆除の現場で遭遇し話していくうちに、あいつの情に厚い部分をひしひしと感じることが多くなった。
いつも民間人の避難が最優先。逃げ遅れ怪我をした子供がいれば、すぐに手当し親元へ連れていった。
それは俺に対しても同じだった。
なんでもない小さな傷でも、あいつは躊躇なく絆創膏を押し付ける。
それがお節介のようでいて、でも何故か悪くないと思っていた。
ノリも良く、ベタベタするような女ではないから、面倒くさいと思ったことは1度もなかった。むしろ居心地が良かった。
しかし、今日は違った。
あんなに怯える姿を見たのは初めてだった。
カタカタと全身を震わせ、こちらの声にも気づかない程に恐怖している姿に、俺は少し苛立ちを覚えてしまった。
いつもの気丈さはどこいったんだよ。
あんなの悪魔呼べばすぐだろ。
何怖がってんの?
色々な言葉が浮かんでくる。
何か言いたげな目でこちらを見てくるA。
いつまで経っても震えは収まる気配がなかった。
ただ、その姿に俺は何か違和感を感じた。
苛立つと同時に、俺は目を逸らすことができなくなった。
いつもと違うAの姿に釘付けになってしまった。
こんなに怖気付くAを初めて目の当たりにして、俺は興味をそそられていた。
その姿は何故か魅力的に見えた。
もう少し観察していようと思い近づこうとしたその時、大きな狐の頭が現れ、ふと我に返る。
別のデビルハンターが来た。
その場から離れたあとも、友人と再会を果たしたAを俺はずっと眺めていた。
そして見えた、あいつの弱々しい笑み。
それを見て俺もつられて小さく笑ってしまった。
今日一日で、あいつの色んな表情が見れた。
覗き込まれて恥ずかしそうにする表情、恐怖に満ちた泣きそうな表情、今にも崩れそうな笑み、、、
軽く思い出しながら考える。
なぜあんなに不自然だと感じたのか、
どうして目を離せないほど魅せられてしまったのか、
ふと、違和感の原因に気がついてしまった。
そういえば、あんなに泣きそうな表情をしておいて
あいつは一滴も涙を流していなかった。
144人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麦踏(プロフ) - せつなさん» せつなさんありがとうございます!!とっても嬉しいです;; (2021年3月29日 4時) (レス) id: b9c2e389f7 (このIDを非表示/違反報告)
せつな - とても面白いです、、!! (2021年3月25日 19時) (レス) id: 7d809df817 (このIDを非表示/違反報告)
麦踏(プロフ) - あるみくさん» あるみくさんありがとうございます!!めちゃくちゃ嬉しいです;;亀更新ですがこれからもお読みいただければ幸いです!!! (2020年12月24日 1時) (レス) id: b9c2e389f7 (このIDを非表示/違反報告)
あるみく - え…好きです←唐突。え…おもろ…飛びそうなくらい好きです。頑張ってください (2020年12月23日 23時) (レス) id: 8de5b8d706 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:麦踏 | 作成日時:2020年12月18日 2時