22.既視感 ページ22
小さな部屋は、シャワールームだった。いわゆる、風呂とトイレが一緒になってる部屋。
そこを二人で物色していると、Aさんが震える声で「…キヨさん、これ…」と言った。
Aさんが開けた小さな引き出しの中には、一つの白いスプレー。手に取ってラベルを見てみると、掠れて読めないが英語が書いてあった。
キ「メ…ディ、カル…」
A「medical spray、医療用スプレーって書いてあります。」
キ「ふーん…で、これが?」
A「掠れてるけど、具体的な効能とかは何も書いてない。消毒用なのか、治療用なのか…こんな商品、お店で見たことないです」
キ「…まあ、地域独特の商品って、あるからねえ。ここが何県かはわかんねえけど…」
A「…キヨさん。」
Aさんが、オレの腕を引っ張って部屋の外に出た。
A「わたしはこのスプレーを、お店では見たことないけど…ゲームの中では見た事があります」
キ「……え?」
咄嗟に理解してしまったような事実を認めたくないばかりに、惚けた声でオレは聞き返す。
まさか…いや、始めからずっとある既視感…
気づかないふりをしていた既視感。
辺りをぐるりと見回してからAさんに目をやると、青ざめた顔でオレを見ている。
オレはAさんの手をグッと握ると、足早に広間の反対側に向かい、残りの部屋を全部確認した。どの部屋にも、人はいない。
……この建物の作りにとても覚えがあった。
認めたくない。認めるのが怖い。
だけど、窓際の小さな引き出しに手を伸ばし、一気に引いた。
キ「…………」
そこにはとても馴染みのある、赤い柄の折りたたみナイフがあった。
馴染みはあるが自分の手で握った事はないそれを、震える手で掴む。オレの左手を握るAさんの手に一段と力が入り、オレは全身に冷たい汗が流れるのを感じた。
キ「ここは…………」
ゲーム、13日の金曜日の世界。
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いりや(プロフ) - さんご。さん» 貴重なさんご。様のコメント頂きありがたき幸せです!私もさんご様の作品沢山読ませて頂いてます。私には書けない独特のキレ味がたまりません。さんご様の期待に添えるよう、残りの話も頑張ります。 (2021年8月4日 23時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
さんご。(プロフ) - ランキングで見て気になっていたので飛んできました!めちゃくちゃ面白いです、、私中々他作品にコメ残すことないのですがこれはぜひ感想を伝えたくて書かせてもらいます、、!これからの更新楽しみに待っております! (2021年8月4日 12時) (レス) id: 964fb42fef (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - ゆのまるさん» ひええ、ゆのまる様に読まれているとは…ありがとうございます!占ツクで初めて読んだのもお気に入り作者様第一号もゆのまる様です。牛さん新作も必要以上にチェックしてます、ゆのまる様を惹き込めた自分に乾杯☆ (2021年8月3日 23時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
ゆのまる(プロフ) - はじめまして、先程誤字があったのでもう一度送ります。すみません( ; ; )通知がきてすぐ読ませて頂いてますが、お話が凄く面白くて毎度読むたびに惹き込まれております…!今後のお話の展開もの凄く楽しみにしております( ; ; )無理せず頑張ってください…! (2021年8月3日 23時) (レス) id: 587b75f302 (このIDを非表示/違反報告)
いりや(プロフ) - 颯希さん» お読みいただき有難うございます!すみません、続編作ったのですがまだ公開してませんでした。こちらでもう1話公開してからの続編になるのですが、先に作ってしまった故に紛らわしくなってしまったので一度削除しました。少しだけお待ちくださいませ。 (2021年8月3日 20時) (レス) id: dfbc56e474 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いりや | 作成日時:2021年6月14日 23時