愛してんだ。2 (ページ4)

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あれから1年
ぱったりと彼女からの連絡は途絶え

北山さんもまだ在籍している。

あの時と同じだ。
急に俺の元からいなくなって
俺の知らないところに離れてった。

｢おい！聞いたか？北山さんのところ｣

息を切らして俺のデスクに手ついて
本人は小声で言ってるつもりだろうけど
周りには全部聞こえてるくらいの声で
そう言うのはがや。

｢あぁ～……松田さんが出産祝いって
なんか渡してたのみた｣

｢……大丈夫？｣

『離婚しようかな』

って言ったのに。信じた方が悪い。
好きになった方が悪い。
そんなこと分かってる。

｢大丈夫も何も普通の事だよ
結婚してたら子供が出来たって不思議じゃない。
だからもうやめてくんない？その話。｣

ただの八つ当たり。
優しい言葉をかけてくれた事に
自分がダサくて虚しくて
それを隠したくて強く当たっちゃった。

｢おう、｣

それだけ言って自分のデスクに戻る
ガヤ。

本当、ごめん。俺まだ余裕ないわ。

だけど、また神様のいたずらなのかって
ただタイミングが悪いだけ。

今日は北山さんと大本さんの所に商談。
一年がかりでやっと取り付けた仕事だった

北山さんと待ち合わせの時間に
駐車場に行く。
久しぶりにに乗るこの車。
北山さん専用の営業車。

車に乗ると、
子供の写真が置かれていた。

目がくりくりの、
ちょっと鼻が上に向いたみづきにも
北山さんにもよく似た色の白い男の子。

ふっくらしたみづきが愛おしそうに
その男の子を抱いていた。

｢行くぞ｣

って北山さんのひとことで
我に返って、車を走らせた

｢言ってくれればよかったのに、
ご懐妊おめでとうございます。
……って言ってもちょっと遅いか｣

｢まあな……ありがとう｣

ただ気まづいだけの空気。
なんでこんな話しちゃったんだろ
でも1度動き始めた口は
その気まづさを消したかったのか
止まらなくて

｢男の子……よく似てますね。｣

｢おう、｣

｢なんでそんな気まづそうなんですか？
やめてください、僕……大丈夫ですよ｣

全然大丈夫じゃないのに嘘をついた。

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